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函館の五稜郭タワーに登って思うこと

学芸員さんの研修の仕事で函館に行きました。北海道はおよそ20年ぶりですし、函館は初めてです。出張に行くと時間のある時には各地の歴史博物館や民俗資料館、史跡などを見て回るのが好きなのです。もちろん地酒をいただくのも。

箱館奉行所。ものすごい立派な建築でした。500円払って見学をお勧めします。

今回は日本の最後の内戦の地である五稜郭にやってきました。旧幕府軍と新幕府軍や新選組の土方歳三も戦った場所です。

五稜郭は箱館藩の役所が置かれた場所で、幕末にできた役所を守るための西洋式の城郭です。異国からの攻撃ではなく同じ日本人の新政府軍から攻撃を受けてあえなく占領されました。皮肉なものですね。

五稜郭公園の入り口あたりに高くそびえ立っている五稜郭タワーがあります。そこの展望台には五稜郭の歴史や歴史を展示したスペースがあります。様々な歴史のエピソードを写真などの資料から復元した小さなジオラマが作られて配置されているのですが、その作りが非常に精巧でよくできており、楽しみながら五稜郭の歴史を学ぶことができます。こういう模型を見るの、大好きなのです。

この展示室に携わられた五稜郭タワーの企画室の室長さんとご縁があり、案内して頂きました。五稜郭は昔はただの公園で、お堀には乗り捨てられた自転車が転がっていたりゴミ等が溜まっていたそうです。市民のための普通の公園で、公園の中では地元の幼稚園や小学校の運動会が行われたり、お花見でみんなお酒を飲んだり本当に市民の日常使いの公園だったそうです。それが箱館奉行所が復元されてからは史跡として整備されてとてもきれいになったとお話ししてくださいました。そんな庶民的な公園もなんだか素敵だなと思います。

展示室のジオラマも歴史上の人物は写真を見て顔を似せて作っているのですが、その他の人物は実は五稜郭タワーの職員の皆さんのお顔に似せて作っているとの事でした。一般のお客さんにとっては関係ありませんが、この施設で働く皆さんのモチベーションが上がる良いお話だと感じました。

精巧に作られたジオラマ。建物の裏側や天井まで細かく作り込んでいるので、、四方からみて楽しめます。

壁面にある歴史を解説するパネルも非常に写真が大胆に用いられてデザイン性が高いです。展望台からの函館の眺めも素晴らしかったですが、そのうしろ側にある展示も素晴らしかったです。じっくりと解説パネルを見ている観光客も結構大勢いました。

函館山からの夜景は特に有名ですが、五稜郭タワーからの夜景もきっと素晴らしいに違いありません。函館山は海からの気流のせいで、頂上の展望台によく雲がかかってしまうそうです。今回僕も三日間函館にいましたが一度も函館山のてっぺんは望むことができず、夜景も楽しみにしていたのに見れませんでした。でも五稜郭タワーに登ればよかったんだなぁと後で気がついてちょっと悔しい思いです。

観光地に行った人たちはおいしいものを食べて非日常的な空間で癒されたいと思っています。同時に、その土地の歴史や風土などを感じることも旅の魅力なのだと思いますが、あまりそれに関心を持っている人は少ない気がしています。そのためには地元のミュージアムや博物館などの施設がもっと身近な存在になっていかなければならないと思うのです。観光の途中でも足を運びたくなるような動機付けや企画があると良いのですが。日本には様々な史跡や観光資源があるので、それらがその土地の歴史や自然を学ぶきっかけとなったら良いのになあと感じています。

室長さんが函館の街を眺めながら色々な函館の歴史や街のこと、子供の頃の地元のことなどいろんなことをお話ししてくださいました。本当に楽しい時間で、函館の街が大好きになりました。「あの海から大砲を撃って、この五稜郭の真ん中の奉行所の櫓に命中したんです」と、実際の海までの距離を見ながら説明していただくと「へへー!あの距離から命中させたんですか。すごいですね!」とリアルに驚きました。

この感動や知の喜びって、実はミュージアムの役割なんだなあと気づいたのです。室長さんが観光客の一人ずつにお話しするわけには行きませんが、展示パネルや資料がその役割を行います。そういえば、五稜郭公園の中にも、無料のボランティアガイドさんがお客さんに一人ずつついて案内をしていました。まさに歩く展示解説パネルです。いや、逆かもしれません。展示解説パネルが、ボランティアの人たちや室長が話してくれたことをきちんと伝えなければならないのでしょう。

もちろん学芸員さん達は一生懸命お仕事されていると思いますが、新しい人たちや若い人たちそして遠くから訪れる観光客をターゲットにした新しい企画をどんどん企画して、歴史や資料の魅力をきちんと伝えられるような新しいことをしていただきたいと思っています。

学芸員の資格を持ってらっしゃる室長さんとお話をしていて、そんなことを考えさせられました。お話がとても上手な、室長さんに感謝です。

五稜郭タワーの1階には箱館戦争に使われた大砲や土方歳三の銅像などがおいてあります。実物大の大砲はやはり迫力があります。ちょっとした博物館のような五稜郭タワーでした。どうぞ函館に行かれたときにはぜひ五稜郭タワーに登って上空からの景色を眺めてください!函館山も海も街もとてもきれいに見えますよ。天気が悪くて函館山から夜景が見えなくても、ここに登れば大丈夫!(夏は夜景は難しいかな。)

コロナの影響で当面の間は営業時間を短縮しているそうですので、ホームページをみてくださいね。
ここのソフトクリームは絶品らしいです。

https://www.goryokaku-tower.co.jp/

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熊谷淳一

熊谷淳一

株式会社ノイエ 代表取締役。デザインで経営を伸ばす経営コンサルタント・クリエイティブディレクター。デザインは第5の経営資源としてデザイン経営とマーケティングの研究にいそしむ。 お酒、書と陶芸が好き。 尊敬する人は岡本太郎。
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