社長ブログ:クマデ総研

デザインに”自分らしさ”は必要か?

最近デザイナーがブログを書いたりYouTubeでデザインを語ったりすることが多くなってきました。多くは若いデザイナーで、おっさんデザイナーはSNSもスマホも使いこなせないのか、あまり目にしない。

ときおり、「ちょっとそこへ座りなさい。座っておじさんの話をお聞き!」と言いたくなるようなブログもある。まあ、割と多い。先日もこんな文章を目にした。

「アート=自己表現=自分らしさ」が、デザインにはどうしても必要になるのではないでしょうか。なぜなら、自分らしさがないと、デザインは単調になって面白くないのです。

この日本語もちょっと何言ってるのかわかりにくいですが、「自分らしさがないと、デザインは単調になる」ので、アートのような自己表現がデザインにも必要だ。と言いたいのかな、と思ったら、

デザインは、自分を表現する場ではなく、あくまでも商品やサービスをお客さんに買ってもらう・使ってもらうための設計です。そこに“自分らしさ”をどのぐらい出すのか?

と続いてます。基本はわかってるじゃん。この後半の問題提起をしたかったのだな、と解釈。
デザインに、どのくらいの自分らしさを出せば良いのだろうか、だって?ちょっとそこに座って耳の穴をかっぽじってよく聞きなさい。

自分らしさなんて出しちゃダメなんです!どのくらい出せば良いのか、などと出し方をコントロールするものではないんです!何のためのデザインなのでしょうか?あなたはさっき、「デザインは、自分を表現する場ではなく」と言っているにも関わらず、「”自分らしさ”をどのぐらい出せば良いのだろうか?」と言っている。矛盾していませんか?

出すべきは、「あなた」らしさではなく、「クライアント顧客」らしさなんです!

クライアントや顧客の商品やサービスらしさ、その企業らしさ、その企業のお客様が共感していただけるような世界観、そのためにはどんなデザインを施せば表現できるのか?どんな配色、どんな形、どんな書体を使えばそれが表現できるのか。それにフォーカスを当てて、まだ見えない世界を見える化するのがグラフィックデザイナーの仕事です。あなたらしさなんか出す必要もないし、出しちゃダメなんです。そんなものノイズにしかなりません。

しかし、表現するときにはどうしても、その人らしい配色の癖が出たりその人っぽいデザインになってしまうことは往々にしてあります。それはしょうがないことです。デザインも絵画も音楽もプログラミングだって、料理だって、クリエイティブなものには無意識に個性が出てしまう。それはそういうものですから構いません。「どのくらい自分らしさを出そうかな」という邪心とは違うことです。

時にはその滲み出た個性が人気になり、あの人にデザインして欲しいとか、○○さんぽいデザインでお願い、とか言われることもあります。80年代にはそういう「作家先生デザイナー」がたくさんいました。サイトウマコト氏とか、永井一正氏とか、佐藤晃一氏など、ひと目で彼らが作ったことがすぐにわかるデザインでした。本当に素晴らしいデザイナーで僕も尊敬しています。デザイン年鑑を眺めてはその美しいビジュアルにうっとりしていたものです。

サイトウマコト氏のポスター(左)  佐藤晃一氏のポスター(右)

しかし、80年代は景気も絶好調で何でもアリ、新しいのが価値、面白ければいいじゃん、カネはいっぱいあるんだからさ、と言う時代だったのです。いわば江戸時代の元禄文化の百花繚乱の時代でした。しかし今は違います。デザイナーの基本的な機能は変わっていませんが、デザインのあり方はあの頃とは違います。かっこよければイイ、綺麗なデザインサイコーとか言っているアホデザイナーは食っていけません。なぜならお金を出すクライアントがシビアだからです。景気も悪いし、競争は激しいし、消費人口は減るし、売れないデザインにはお金は投資しないマインドを持っています。

「綺麗なデザインだけで物が売れりゃあ世話ねえよな」と腹の底で思っているクライアントが大勢いる時代です。そのような人にとってはデザイナーの自分らしさなんて何の意味もない。微塵も必要ないのです。むしろ迷惑です。

自分が作るデザインに、自分が他のデザイナーといかに違うのかを表現することではなく、「クライアントが他の競合他社といかに違うのか」、を真剣に考えなければなりません。真剣に考えていれば、「自分らしさをどう表現に取り入れようかなあ」などという邪心は浮かぶ隙もないはずです。

デザインに自分らしさを反映させようと思った瞬間に、グラフィックデザイナーはグラフィックアーチストに変わります。素晴らしいアーチストになって、仕事のオファーをもらう場合もありますが、それはもう「作家」のレベルです。

自己表現したいのであれば、今はSNSがあるので、そこに作品を投稿して自分らしさを追求すれば良いと思う。クライアントのお金を使って自分の作品作りをするのはやめましょう。


こういうことをデザイン学校では教えていない。デザイン学校はデザインテクニック学校であり、デザインの社会性やデザインの経営における役割など、経済や経営との関係を教えるべきなのだが、いつまで経っても変わらない。経済や経営に詳しいデザイナーの講師がいないし、デザインに詳しい経済や経営の専門家もいないから。

新型コロナウイルスの影響がこれから拡大し経済も大変なことになります。今のうちに、もっと勉強して本当に社会に対してデザインができることを本気で考えていかなければアホデザイナーは淘汰されるでしょう。

ちなみに、このブログを書いたデザイナーさんは勉強や経験が足りないだけで、アホではないと信じます。

デザイン
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熊谷淳一

熊谷淳一

株式会社ノイエ 代表取締役。デザインで経営を伸ばす経営コンサルタント・クリエイティブディレクター。売れるデザインをつくるためにマーケティングの研究にいそしむ。 酒好き。書と陶芸好き。 尊敬する人は岡本太郎。

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