弊社の制作物の著作権
弊社で作成したデザインは弊社の著作物であり、著作権は弊社にあります
よくあるのは、「デザイン料を支払ったので、著作権も一緒に移った」と間違われる場合です。そのデザインを弊社に無断で他の色々なツールに使用したり、色や形を変えて使用することはできません。
デザインの使い回しはしないでくださいね
例えば、「カタログで作ったデザインをポスターにしたいのでデータをください」というようなご要望がごくまれにあるのですが、カタログのために作ったデザインはポスターのために作ったデザインではありませんので、再利用する場合には「二次利用」とよばれ、「二次利用料金」が発生します。金額は使用される媒体の露出度や重要度によって違いますが、およそデザイン料金の33%から70%の間になります。ホームページの場合は露出度も高く重要なツールなので50%以上の価格になります。
カタログで作成した図版を、無断でデザインを変えてポスターに使用することや、無断で修正・変更、アレンジはできませんし、これらは「同一性を保持する権利」として法律で禁じられています。
このことは弊社だけでなく、全てのデザイン会社に言えることです。デザイン会社だけではなく、作家やプログラマーやイラストレーターなどのアイデアを売っているビジネスなど、著作者全てに言えることです。
版下データは無償でお渡しできないのです…
アレンジが簡単にできてしまう版下データはお渡ししておりません。
文字や図版を差し替えてご自分の会社で印刷や増刷をしたりすることもできません。デザイン会社にとって版下データは「金型」と同じようなものです。
データが必要な場合は「買い取り」をしていただいております。
買い取り価格は状況やクライアント様の会社の規模(資本金)によりますが、デザイン料金の5〜10倍程度になります。
版下のデータを買い取りしていただくことも可能ですが、修正がある場合は修正の依頼をしていただければと思います。デザインの変更や大幅な修正でなく、文字の修正のような簡単な修正であれば修正料金は数千円程度ですので、買い取りしていただくよりも、修正をご依頼くださった方が経済的です。
印刷を自社で行いたい場合
「印刷は自分の知っている安い印刷会社を使いたいからデータをください」
「増刷のたびに印刷料金に手数料が乗っかってくるのは嫌なのでデータをください」
という場合もあります。
この場合にはアウトラインした印刷入稿用のデータを納品いたします。その場合、版下データの譲渡の料金がかかります。データの譲渡の価格は、デザイン、制作費の3〜5倍です。アウトラインしていないデータはお渡ししておりません。
弊社の著作物の一部分を変更したい場合
基本的に弊社の著作物の著作者は弊社になります。
無断で著作物を変更、修正した場合は著作権の侵害となりますので、 弊社以外のデザイナーに依頼して、弊社のデザインに手を入れたい場合は、ご相談ください。
著作権を買い取りたい場合
著作権ごと移行して色々なツールに使用したい場合は「著作権の買い取り」ができます。しかし、その場合でも「同一性保持権」によりデザインを勝手に変えて使用したり、アレンジすることはできないことになっているのです…。
著作権は大きく分けて2種類あります。
ひとつが「著作権(財産権)」。
もう一つが「著作者人格権」です。
「著作権(財産権)」は譲渡することが可能ですが、「著作者人格権」は法律で譲渡できないことになっています。
ただし、双方の話し合いで著作権譲渡契約書で「著作者人格権を行使しないものとする」とした場合は、デザインの任意の修正、変更を行うことに関して、弊社からのデザインの確認は行わない場合があります。
よって著作権の譲渡は「著作権(財産権)」に限られます。財産権とついているように、著作物に関する多くの財産(お金)に関わる利益の権利を譲渡するわけなので、デザイン費用の5倍から数十倍の価格が相場ですので、高額になってしまいますことをご了承ください。
「著作者人格権」に関して
著作者人格権とは、著作者の人格的利益を保護する権利を指します。その内容は3種類あります。
- 「公表権」(自己の著作物を公表するか否か等を決定する権利)
- 「氏名表示権」(自己の著作物に著作者名を付すか否か、どのような名義を付すかを決定する権利)
- 「同一性保持権」(自己の著作物の内容や題号をその意に反して改変されない権利)
です。
著作者人格権は、著作者であったとしても第三者に譲渡できない権利です(著作権法59条)。
そのため、契約書の中に、たとえば「乙(弊社)は甲(クライアント)に対して著作者人格権を行使してはならない」と書かれてあったとしても、契約よりも法律のほうが効力が強いため、この記述は無効になります。
弊社としては著作者人格権の中でも「氏名表示権」はほとんど要求致しません。よくCMなどには画面の隅に「音楽:○○○○」などが表示されますね。弊社の作ったロゴマークの下やチラシの中に小さく「デザイン:株式会社ノイエ」という表記をして欲しい。などという権利のことですが、そんなことをするつもりはありません。
しかしデザイン会社ですので「同一性保持権」は守っていただくことになります。これは勝手にデザインを改変されてしまうことを防ぐ権利です。これに関してはご理解していただけると思います。ですので、たとえ高いお金を支払って著作権を譲渡されても、デザインを好き勝手に変えることはできないのです。そうであれば、デザインの著作権を買い取る意味はほとんどないと思いますし、弊社ではこれまでも「著作権の譲渡」に関しては、後述する裁判沙汰になった1件の例しかありません。
ロゴマークに関して
ロゴマークに関しては、その性格上様々な販促物やツールに使用していただくことは可能です。デザインのアレンジはできません(あまりしないと思いますが)。
様々な印刷物に使用できるように、Adobe Illustratorのデータを納品いたします。
ロゴマークの商標登録を取得したい方
新しいロゴマークを作成し、商標登録を取得したい方もいらっしゃると思います。その場合、著作権の譲渡をしてもらわないと商標登録を取れないと思っている方が多いのですが、著作権がなくても商標登録を取ることはできます。著作権と商標登録は全く別の法律で守られているものです。
ロゴマークの著作権は私たちにありますが、私たちとしても、クライアント様が商標登録を取得していただくことを望んでいます。もちろん、商標登録を取得する場合に、特別な料金も発生しませんし、変な権利を振りかざすこともありませんので、安心して商標登録をしてください。
キャラクターに関して
キャラクターに関しても、その性格上、様々な販促物やツールに使用していただくことは可能です。しかしキャラクターのポーズや表情を変えたりすることはできません。キャラクターは、最初に複数のポーズを決めて納品するのが通常行われています。マニュアルがあって使用方法がCIのような扱いになっている場合も見受けられます。
どうも、「できないできない」といった堅苦しい話で大変恐縮なのですが、これらのことは弊社だけではなく、全てのデザイン会社共通のことなのです。
そしてこれらは弊社が決めたことではなく、日本の法律で決められていることですので、ご了承ください。
以前、このようなご説明をさせていただいても「日本の法律がおかしい!」と言ってご理解してくださらなかったクライアント様がいらっしゃいました。数百万のお仕事でしたが、泣く泣くこちらからお断りし、残念ながらお取り引きは遠慮させていただきました。
今まで、著作権の話を明確にするデザイナーが少ないのであやふやになっている場合が多く、トラブルになっています。
クライアント様とは気持ち良く末長いおつきあいをしたいと思っておりますので、ご理解のほどよろしくお願いたします。
デザイン使用するために支給していただく原稿の著作権
著作権を侵害したままデザインを作成し、世の中に出てしまうと大変です。訴えられたらなかなか勝てません。それに、賠償金もバカになりません。特にホームページでは海外の企業からクレームをつけられたら逃げられません。
著作権の問題は弊社も注意深く扱っていますが、クライアント様からいただく原稿が著作権を侵害しているかどうかは調査しておりません。知らない間に侵害していることのないよう、ここではポイントだけお知らせします。
一般の人が写っている写真は使用できますか?
公の群衆写真はOKですが個人の顔がはっきり写っている、主体となっている写真は許諾が必要です。写り込みは問題ありません。
絵画作品は使用できますか?
日本の場合著作者の死後70年経っていれば使用できます。しかし親族が管理している場合はできないことがありますので、調べる必要があります。
どこかのサイトからダウンロードした写真は使えますか?
使用できません。それらの写真にも著作権があり、無断で使用すると権利の侵害となります。
ホームページのフリー素材は使えますか?
フリー素材と書かれていても、注意書きを良く読んでみると「商用は禁ずる」と書いてあることも少なくありません。使用規範を良く読んでご利用ください。
テレビやゲームを撮影したものは使えますか?
使用できません。しかしゲームをしている人物のスミにゲーム画面が写るというような場合はゲーム画面がメインになっていませんので大丈夫です。
ミッキーマウスのTシャツを着たモデルも、モデルが対象であればセーフです。しかしディズニー関連は著作権、商標関連に非常に厳しいので注意してください。
あるクライアントとのトラブルの例
2015年に、版下データに関して、あるクライアントとトラブルになりました。
「版下データをくれると思っていたのに、くれないのならば、お金を支払わない」と言い出したのです。こちらは版下データはお渡ししていないと言っていたのですが、言った言わないのトラブルになるのは弊社も本意ではありませんので、版下の譲渡も条件付きで(クライアントが主催するセミナーへの無料での参加)承諾しました。しかし、その後さらに著作権も無料で欲しいと言い出したのです。デザインの納品から11ヶ月以上もこちらから交渉を試みたのですが、返信もしてくれず、複数の弁護士に相談したところ、悪質なので訴えた方が良いという話になり、内容証明郵便にて督促状を送ったうえで、支払いがなければ訴訟を起こす旨を伝えました。それでも態度と主張を改めないので、やむなくクライアントに対し、東京簡易裁判所において民事訴訟を起こしました。結果はもちろん弊社の勝訴です。裁判官も判事もこのクライアントの主張に対し、あきれていました。
もしもこのクライアントが経験の浅い若い人や、世の中の事をあまり良く知らないある意味職人的な人だったら、こちらも訴訟は起こしていなかったでしょう。しかし、この人は自分の会社を10年も経営し、中小企業診断士の資格も持っている50歳を過ぎたいい大人です。中小企業診断士の試験は難関国家試験であり、試験科目には経営法務の科目として著作権や知的財産は重要頻出論点のはずなのですが、こういう人ですら、著作権に関して理解が及んでいないのは、本当に残念な事です。
訴訟において請求したデザイン料金はたったの20万円です。お金が欲しいから訴訟を起こしたのではありません。デザイナーとしての権利をないがしろにするような人を放っておく事は、この業界に対しても良い影響は与えませんし、この事は弊社だけの問題ではなく、デザイン業界全体の問題でもあり、物を作る著作権を持つ人たち全体を包括する問題だと思ったのです。
後日、この訴訟に関しては詳細なレポート記事を書くつもりでいます。この訴訟の経験を、広く社会に伝えることにより、デザイナーをはじめ、物を作る著作者のためにも、そして著作権に関して理解が及ばない人たちに対しても、著作権に関して考えてほしいと思っています。
その他、著作権に関して参考になるサイトをご紹介しておきます。
デザインの著作権 JAGDA(日本グラフィックデザイン協会)
ユニクロ「UTme!」利用規約の「著作物に関する全ての権利を無償で譲渡」や「著作者人格権を行使しないことに同意」はなぜダメなのか?(鷹野凌氏のブログより)