デザイン戦略

小さな会社が潰れる一番の原因は?

事業を経営する者にとって1番恐れていることは倒産です。人間にたとえれば死を意味します。

倒産する原因の第1位は販売不振であると中小企業白書に統計が出ています。第3位以下の諸々の理由は原因として考える必要がない程にダントツに大きな数字です。

倒産原因の第2位の既往のしわよせというのは、経営状態が悪化しているにもかかわらず何も手を打たないままにして、急に倒産することをいいます。この場合経営状態が悪化する原因を販売不振とすれば、既往のしわよせも含めておよそ8割が販売不振で倒産してしまうと言えるでしょう。

なぜ販売するのが難しいのか?

なぜ販売するのがこんなに難しいのでしょうか?
事業を行う経営者は自分の業界や業種の中では優れた専門家なのですが、販売する専門家ではありません。飲食店ならばおいしい料理を作ることは得意ですが、それを多くの人に販売するノウハウを持っていません。素晴らしい技術を持っていたり素晴らしいサービスを提供できる人もたくさんいます。しかしその人たちは自分を売り込んだり自分のサービスを買ってもらったりすることについては全くの素人です。

しかし、美味しいものを作れば売れる、優れた技術ならば買ってくれると信じ込んでいるので、販売の勉強はしなくても構わないと感じているのです。ですので売れない会社のホームページやチラシはデザインやマーケティングにまったく気を使っていません。

拡散する努力がなければ「経営」ではない

しかし、何のために事業を経営しているのでしょうか?

「美味しい料理を提供して多くの人に喜んでいただきたい」
「自分の技術で人や社会のために役に立ちたい」
「誰かの悩みを解決して助けになりたい」

その結果として、喜んでお金を支払っていただける。そして豊かな生活、幸せな人生を送りたい。

経営者の多くがそう考えているのではないでしょうか?
そうであれば、あなたのその素晴らしい技能や技術、その想いを多くの人に知らしめて、たくさんの人に教えてあげる「義務」があると思うのです。お金を儲けるためではありません。人に喜んでもらうためには、良いことを広げる努力や知識が絶対に必要なのです。それがなければ「経営」とは呼べないと私は思うのです。お金は後から自然についてきます。

良いものを持っていて、提供できるのに、それを知らしめていないのは「宝の持ち腐れ」に等しく、すごくもったいないことです。もっと自信を持って、積極的にあなたの事業を広げる努力をするべきなのです。

「売れない」のではなく「売っていない」から売れていないのだと、感じています。正確に言えば、中小企業や個人事業者の方たちは販売や自分を売り込むのが苦手で、どうして良いのかわからない。だから立ち往生してしまっているのではないでしょうか。20年以上経営者のご相談に乗ってきた私はそう感じています。

良いものなのになぜ売れない?

これまでに多くの経営者さんの相談を受けて参りました。皆さんとても素晴らしい商品やサービスを持っていて、人間的にも素敵な人がたくさんいます。私のところにご相談にいらっしゃる方の悩みは皆同じです。多くの不安や悩みを一言でまとめるととにかく「売れない、集客できないのでなんとかしてほしい」のことばに尽きます。

良いものを売っているのにもかかわらず、なぜ売れないのでしょうか?

その理由は「良さそう」に見えないからです。

私たちが買い物をする時は、安心安全なものを求めて買い物をします。有名なメーカーが作っているからおそらく大丈夫だろう、という心理でものを買っています。しかし有名ではない会社の商品を買うときにはやはり消費者としてはちょっぴり心配です。僕なども多少高くても自分の知っているメーカーの食品を買ったりします。
また、大手のスーパーマーケットに置かれている商品であればメーカーのことは正直それほど気にかけません。有名なお店が変なものを取り扱うはずがないと信用しているからです。

信用していただくために最初にすること

しかしこれがネットの中のホームページであればどうでしょうか?郵便受けの中のチラシであればどうでしょう。消費者は無条件に安心などしてくれません。…というか購入する候補の中にすら入れてもらえないのではないでしょうか。
信用がないから見向きもされないというのは厳しい真実です。ですから無名で小さな会社が信用していただくために1番最初に行うべきなのは「良さそうだ」と思ってもらうことなのです。

怪しそうとか、信用できなさそうとか、安っぽいとか、ダサイとか、汚い、雑、読みにくい、わかりにくい、写真が暗い、コピーの意味がわからない、共感できない、などなど売れない小さな会社のホームページやパンフレット、チラシや会社案内などにはこのような「良くなさそう」なイメージのものが山ほどあります。

しかしそんな販促ツールでも割と平気で使い続ける経営者が多いのです。良いものを提供すれば売れると信じているからです。
あなたが消費者の立場になってちょっと考えてみてください。このようなホームページやチラシを信用できますか?

人もビジネスも「見かけ」は大切

例えば多くのお店が並んでいるショッピングモールでふらりと立ち寄ったお店が、どことなく暗く雑多な雰囲気だったらどう感じますか?そしてそこに立っている店員の服装が乱れており、汚れた靴に不潔な感じの不精ヒゲで、声が小さく笑顔がなく、言葉も全然こちらのニーズにお構いなしで、自分の商品の自慢ばかりしている人だったら、その店から何かものを買おうと思うでしょうか?

買いませんよね。これと同じようなことがネットの世界のホームページで起きています。
実際の世界で、どんなにあなたが笑顔の素敵な真面目で仕事に一生懸命な人だとしても、ネットの世界でそのように見えていないとしたら…。逆に「良くなさそう」なイメージを発信し続けているとしたら、これは放っておいて良いことではありません!そう思いませんか?

人もビジネスも見かけは非常に重要です。見かけだけ良くてもダメなのは当たり前ですが、巷には良い商品良いサービスが星の数ほどあるのです。
あなたの商品やサービスも良いものに違いありません。しかしそれが「本当のあなたの商品やサービスの良さ」が見える形になっているでしょうか?

非言語コミュニケーションの重要性

以前「人は見かけが9割」という本がベストセラーになりました。言葉によらない非言語コミュニケーションが重要であることをわかりやすく書いた本です。グラフィックデザインはまさに人の潜在意識にダイレクトに作用する非言語コミュニケーションの技術です。

色彩が人の気持ちに与える影響や、文字やフォント、レイアウトや写真、イラストなどなど、デザインが醸し出す雰囲気は人の感情に一瞬で深く入り込みます。あなたの商品やサービスを好きか嫌いかの判断を短時間で与えるパワフルなコミニュケーション手段なのです。

グラフィックデザインは日本語では視覚伝達デザインと呼ばれます。デザインはあなたの商品やサービスの魅力を見える形にし、視覚を通して相手に伝達する重要な技術なのです。

もし、あなたのビジネスが暗いお店に、怪しい店員が立っているようなお店に見られていたとしたら、商品やサービスがどんなに素晴らしいものであっても、買ってもらえないでしょう。ビジネスにとって一番大切なものは「信用」だからです。

政府が提言する「デザイン経営」

2018年5月に経済産業省と特許庁が「『デザイン経営』宣言」というレポートを公開しました。日本は今後海外の企業に対して競争力を持つために、ブランド力とイノベーション力の向上が必要であり、そのためには「デザイン経営」という経営手法を広めて企業競争力を向上させようというレポートです。

顧客と長期にわたって良好な関係を維持するためのブランド力の創出や、顧客視点を取り込んだイノベーションの創出としてデザインの効果が期待されています。

デザインは産業競争力に直結するものであり、企業価値を表現する働きをする。そしてイノベーションは社会のニーズを利用者視点で見極め、新しい価値に結びつけること。そこにデザインが介在して初めてイノベーションが実現する、と書かれています。
このようなデザインを活用した経営手法を「デザイン経営」と呼び、政府はそれを推進するという内容です。

このレポートではデザインの効果やデザインの投資効果(つまりデザイン経営はお金になり儲かる)という効果や、世界では既に経営にはデザインが重要視されていることは常識であるとし、経営にデザイン経営を取り入れる実践的な工程などが書かれています。
レポートは無料で見ることができますので、以下のリンクより、是非読んでみてください。(PDFが開きます)

経済産業省ホームページ 「デザイン経営」宣言

デザインを活用した経営手法を日本中に広げようとした矢先に新型コロナウィルスが蔓延してしまい、世の中はそれどころではなくなってしまいました。

世の中に周知されることはなりませんでしたが、コロナがあろうとなかろうと経営にはデザインが重要な手段であり、「デザイン経営」は依然として企業価値を高める有効な経営手法であるということは変わっていません。

デザインは経営に欠かせない経営資源のひとつであることを私は15年以上前からこのホームページやブログで訴えてきました。経営者に向けてセミナーも行い、啓蒙活動を続けています。ようやく「デザイン経営」という言葉も意識の高い経営者に届くようになってきました。ここ数年で経営者向けのデザインの本もたくさん出版されていることからもブームではなく、産業界に定着することを期待しています。

小さい会社のビジネス構造の変化

小さな会社の名刺やホームページなどのデザインがたとえ手作り感がいっぱいな出来だとしても「規模が小さい会社だから普通でしょ。みんなそんなもんだよ」などということは今後は通用しないでしょう。

小さい会社や中小企業は販売や営業に関してあまりデザインにはお金をかけていません。しかし今はインターネットで安いコストで自社の商品やサービスを訴求することができるようになりました。小さい会社でも自社の訴求にもっときちんと力を入れるべきなのでが、そのような会社はまだ少ないように感じます。

今までは同業他社と競争はするものの、皆で成長することができました。市場が拡大していたからです。拡大するパイを新規参入が増えても規模は違えど皆で食べることができました。

しかし人口が減少し始め、経済成長が止まりました。これ以上パイの大きさは拡大しない中、海外からの競合、代替品の脅威、消費者ニーズの多様化、インターネットによる情報弱者の減少などにより、競争が激化しています。有名な大企業すらも統合合併したり消えていく時代になりました。

それにも関わらず、これまでと同じようなビジネスモデルや慣習にとらわれて新しいことを始めようとしない中小企業がたくさんあります。

小さい会社こそ、デザインに投資を

いまだにファックスで取引したり、会計も手書きなど、IT化やDX化の遅れがよく言われますが、デザインやブランディングの重要性もこれからの時代では重視するべきだと考えます。

日本の産業構造がここ10年ほどで大きく変わっています。
以前は中小企業や個人事業者は大企業から仕事が自動的に流れてきました。大企業がお金をかけて消費者に対し広告やCMを打つなど販売活動してくれたので、中小企業は広告宣伝や自社の販促をする必要はありませんでした。しかし2000年代からはインターネットとグローバル化によって大企業の製造は海外に移りました。そうなると大企業と中小企業の相互依存関係は弱くなり、大企業から切られた中小企業は食べていけなくなったのです。
そこで自分たちで下請けを脱却して自社製品を作ったり、新規顧客開拓をするために販売活動をする必要が出てきたのです。

そして2020年から始まった新型コロナウイルスの影響でこれからどのような時代になるのかますます不透明になってきました。しかし考え方によってはこれはチャンスでもあります。ネットを使って近隣だけではなく市場が日本全国に広がったと言えるでしょう。競合も増えるでしょうが、だからこそ今、デザインに投資をするという小さな会社の経営者はまだまだ少ない。
他の人がやっていないことを先に実行するスピードが経営にとって重要です。

会社の潰れる最大の理由が販売不振であるのだから、今、経営者が力を入れるべきは販売なのではないでしょうか。商品、サービスの品質を高めていくイノベーションを行うと同時に、自社の魅力や差別化をブランディングを行って訴求していく。これらの実現に、デザインが非常に重要な役割があるということを認識していただきたいと思います。デザインにかける費用はコストではなく、何倍にもなって帰ってくる投資なのです。このことは政府が提唱している「デザイン経営」のレポートにもエビデンスが掲載されています。

あなたの商品やサービスを魅力的に見せて「良さそう」と思ってもらい、ブランドを作り信用される。そしてあなたのお客様があなたのファンになって、クチコミや紹介が増えていく。私たちはそのお手伝いをしております。何でもご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました