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「デザイン経営」宣言のトークセッションに行ってきました……が。

株式会社Tooのイベント「Design Surf Semminer2018」にいってきました。

いろんなセッションがありましたがその中の”「デザイン経営」宣言とデザイン経営の実践”と言うテーマのセッションに参加。

「デザイン経営」宣言をまとめた経産省の方とデザイナーが何やら話をするらしい。ということで、仕事を抜け出し、虎ノ門ヒルズへ行ってきました。

経産省の方のお話は、これまでの通産省の時代からの「デザイン経営」宣言までの経緯と歴史をスライドで示してくれました。

私も、この「デザイン経営」宣言を読んだ時の第一印象は、「何を今さら」と思いました。通産省時代から、国は経営にはデザインが重要であると言う話を再三してきているし、1980年代から田中一光がアートディレクションという考えを西武グループという企業の中でデザイン経営を実践してきており、彼の著書にも同じことが書かれています。現在では水野学さんや佐藤卓さんもそれを実践しています。

プレゼンでは1957年の産業技術研究所の機関誌の文章のスライドを見せてくれました。このセッションだけは撮影も録音もOKで、SNSで拡散してくださいということでしたので掲載します。(クリックすると拡大します)

1957年

アメリカの工業デザインはデザイナーの能力というよりは経営の考え方が進んでいる。という内容です。「我々がやっているこの形は早く過去のことにすべく努力したい」と結んでいるが、それから61年経った今でも過去のものになっていないのではないか?

1980年代からは「デザインマネジメント」という言葉が出てきており、中身はほぼ同じ。
2003年には、経済産業省製造産業局が戦略的 デザイン活用研究会を立ち上げ、『デザインはブランド確立への近道−デザイン政策 ルネッサンス(競争力強化に向けた 40 の提言)』というレポートを出していますし、2006年にも財団法人 産業研究所から「デザイン導入の効果測定等に関する調査研究」という170ページもある分厚いレポートが公開されています。

このレポートには2003年の戦略的 デザイン活用研究会のレポートを受けて、以下のような文章が冒頭にあります。

「デザインの重要性に対する認識が広がりを見せる一方で、我が国製造業、 特に中小製造業の経営者の多くは、まだ十分にデザインの重要性を認識するに至って いない。 この要因としては以下が考えられる。
●デザインが経営に与える効果が十分に理解されていない。
● 経営におけるデザインの具体的な活用方法が理解されていない。
従って、社外デザイナーを雇う等のデザインへの投資をしようと思うに至らない。」

と行った提言をしているのですが、あれから12年。経産省のレポートから15年、何にも変わっていないのが実情です。

デザインの本質

笑っちゃったのはこのスライド。

デザインの本質は「愛だ!」とか言われても、経営者には響かないだろ。

これを書いたやつはアホなのか?

ではなぜ今、「デザイン経営」宣言なのか?
という関心を持ち、セッションに参加したのですが………。よくわかりませんでした。
歴史はわかった。経緯はわかった。ではどうすればデザイン経営なるものが実践できるのか?経営者が「そうだよね、うちもデザインに投資してみようか」と判断してもらえるのか、そこまでの話には至りませんでした。

経産省の方のまとめのスライド

まとめ

というわけで、セッションが終わってもモヤモヤとしていたので、懇親会で登壇された経産省の方に直接ご挨拶して色々とお話を聞いてきました。

熊谷 「デザイン経営」宣言の内容は以前からありましたが今また改めて公開する意味は何でしょう?

経産省の方 今の時代だからこそ、今度こそ広める基盤ができたと思うからです。以前はその基盤がなかなかできなかったのです。

熊谷 日本の99.7%を占める中小企業の社長に対して「デザイン経営」宣言はどのような意味があるのでしょうか?

経産省の方 これは大企業に向けて書かれたものだからなかなか難しいですよねえ。でも中小企業こそデザインの力を活用してほしい。

熊谷 デザインを活用するための助成金などはできないものでしょうか?

経産省の方 う〜ん、まだ難しいかもねえ。中小企業庁の役割かなあ。

熊谷 どうすれば「デザイン経営」宣言を実現できると思いますか?

経産省の方 それはこれから皆さんが議論して考え、逆に教えていただきたい。

だいぶはしょって書きましたが、経産省もこうするとうまくいく!というような明確な答えは持っていないようです。まあ、それはわかる気もします。何十年も同じことを言ってきたのに、日本の経営者は何も変わらない。テクノロジーが進化し、環境が変化しているけれども、ここ2年ほどでようやく「日本人の働き方、ちょっとおかしくない?」なんて言い始める始末だし、変わっていないことは他にも山ほどある気がする。だから先進国でも生産性が最下位級だったりするのだ。景気も良くなって来て、企業がデザインという価値に投資をする余裕も出て来たと判断しているのかもしれません。

まとめのスライドでも、最後の行に「百者百様のデザイン経営」とありましたが、まさにおっしゃる通り、国がこうしたらいいよ的なことは言えないのでしょう。

まとめに「想い」や「ビジョン」が大切と書かれていますが、経営者は皆「想い」や「ビジョン」はすでに持っています。それと「んじゃデザインが大切だね」という考えに至る間には大きな距離がある気がします。 デザインが経営に与える効果が十分に理解されていないと、ビジョンがあってもデザインに価値を感じないでしょう。この言葉は2006年のレポートにある通りです。何も進んでいません。

今後はどうやったらこれを日本の経営者に浸透させていけるのか、を考えていく必要がある。

それは誰がやるのか?

「経営にはデザインが必要だ」というべき人たちは政府よりも、当のデザイナー達なんじゃないのか?と私は思う。

マーケティングを学んでいないデザイナーも大勢いる気がしてならない。こういう人達をなんとかするには「教育」が重要。経産省の方も「教育に力を入れていく必要がありますね」と力強くおっしゃっていた。私も同感です。何も進んでいないのは、デザイン教育が変わらないからデザイナーの意識も変わらないのだと思う。経産省の方と色々お話できて良かったです。

来年から武蔵美がマネジメントも教えるらしい。デザイン教育も、いつまでも表現技術ばかり教えていないで、ビジネスを教えるべきだ。
欧米のデザイン教育はすでにそれを行なっているし、欧米の経営学部ではデザインも教えている。だから海外のデザイナーは日本のデザイナーと違って地位も報酬も高いのだ。ラン○ーズで激安のデザイン料金で小遣い稼ぎしているデザイナーなんていないのだ。

本当に日本は遅れている。

デザイン経営
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熊谷淳一

熊谷淳一

株式会社ノイエ 代表取締役。デザインで経営を伸ばす経営コンサルタント・クリエイティブディレクター。デザインは第5の経営資源としてデザイン経営とマーケティングの研究にいそしむ。 お酒、書と陶芸が好き。 尊敬する人は岡本太郎。
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コメント

  1. 広田 より:

    私はSP専門代理店で30年間SPデザイン関わって来た者です。
    想いやビジョンというゴールまでたどり着くための地図がデザインなのではないでしょうか。
    最短で誰もが迷わずに行ける解り易い地図。
    遅れている日本だからこそノビシロがありデザインの活躍の場が多いということですね!
    デザーナーにチャンス到来。

    • 熊谷 淳一 より:

      広田さんコメントありがとうございます。
      おっしゃるように、まだまだ伸び代を感じますね。
      しかし、デザイン経営宣言は大企業に向けて作られたと聞いた時には腰を抜かしそうになりました。
      中小企業に向けて言って欲しいんですけどね。
      そういう意味では、まだまだチャンスは遠い気もしていますが、頑張りましょう。

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