今回の旅の目的は、観光でも温泉三昧でもありません。いや、結果的には温泉をこれでもかと満喫してしまったのですが(笑)、一番の目的は「お世話になった先生に会いに行くこと」でした。
東京から大分までは、決して近くはありません。新幹線や飛行機を乗り継ぎ、まとまった時間もかかる。もちろん仕事も調整しなければならないし、安くない交通費もかかります。
それでも、「この人に会いに行こう」と思える相手がいること、そして実際に足を運べることは、人生において本当に幸せなことだと思うんです。便利になった世の中だからこそ、あえて移動の不便を引き受けて会いに行く。そんな旅の記録を、少し綴ってみたいと思います。
街全体が「生きている」と感じる別府の空気感
別府の駅に降り立ってまず肌で感じたのは、この街独特の「湿り気」を帯びた空気でした。
道路のあちこちから、もうもうと立ち上がる真っ白な湯気。石畳の小路に入れば、硫黄の香りがふわりと鼻をくすぐります。
当日はからりと晴れた青空ではありませんでしたが、少し低く垂れ込めた雲が、かえってこの街のしっとりとした情緒を引き立てているように見えました。キラキラしたリゾート地にはない、どこか懐かしく、力強い生活の匂い。「ああ、こういう別府もいいな」と、歩き始めてすぐに感じたのを覚えています。
効率を捨てて、「湯」に身を委ねる贅沢
夜の懇親会まではたっぷり時間があったので、まずは「ひょうたん温泉」へ足を運びました。
最初は「2時間くらい堪能しよう」なんて思っていたのですが、気がつけば3時間以上も滞在していました。自分でも驚くほど、じっくりと湯を楽しんでしまったんです。
露天風呂でぼんやりと空を眺め、お湯の中に身を沈めていると、東京からの移動の疲れはもちろん、日頃の仕事のあわただしさが、指先から少しずつ溶け出していくような感覚がありました。
湯上がりには、別府名物の「とり天」とビールで一息。
サクサクと軽い衣の中からじゅわっと溢れる鶏の旨み。そこに冷たいビールを流し込む。
温泉上がりのこの一杯こそ、大人の旅の醍醐味ですよね。まさに自分への最高のご褒美でした!
100円で触れる、地域に根ざした「本物」の温泉文化
ひょうたん温泉を出て、いでゆ坂へ移動し、公共浴場を4軒ほどハシゴしました。
驚くのはその料金です。1回100円から200円ほど。豪華なホテルのスパとは違いますが、そこには地域の人たちが大切に守ってきた「本物の良さ」が息づいていました。
観光客の僕がそっとお邪魔させてもらっても、地元の暮らしの一部に優しく触れさせてもらっているような、不思議な安心感があるんです。
お湯の温度の高さに驚いたり、浴場ごとに違う壁の佇まいや床の質感を楽しんだり。
同じ「別府の湯」でも、場所によってこれほど個性が違うのかと、五感で学ぶことの多さに圧倒されました。
温泉に入って、石畳の街を歩いて、また湯けむりの中でぼんやりする。
ただそれだけのことですが、心も体もすっかりデトックスされ、思考がクリアになっていくのを感じました。「温泉最高!」なんて月並みな言葉ですが、本当にそれしか出てこないほど充実した時間でしたね。
「直接会う」というコスト以上の価値
すっかり「湯疲れ」した、これ以上ないほど心地よくリラックスした状態で席につきました。恩師を囲み、久々に会う仲間たちと過ごす時間は、何物にも代えがたいあたたかさがありました。
今はオンラインでいつでも顔が見られるし、メッセージ一通で用件は済みます。
でも、その場の空気感、相手の呼吸、視線の温度といったものは、やはり直接会わなければ伝わりません。
そしてふぐ料理の絶品な味わい。特にヒレ酒!2杯も呑んですっかり良い気持ちに。美味しいふぐを囲み、先生の言葉に耳を傾ける。
わざわざ遠くまで足を運ぶその「手間」そのものが、相手への敬意であり、誠実さの証になるのではないか。そんなことを考えていました。
遠くまで来た甲斐があったなあと、心から思える贅沢な夜でした。
今回の別府の旅は、温泉を楽しむレジャーであると同時に、人とのご縁のありがたさを改めて胸に刻む時間となりました。
お金や時間、仕事の都合といった「効率」を優先すれば、旅はもっと簡略化できるかもしれません。でも、それらを全部超えてでも「会いに行きたい」と思える人がいる。そしてその思いに従って行動した一日は、どんな有名な観光名所を巡るよりも、はるかに深い価値のある思い出になります。
皆さんも、もし今、ふと思い浮かぶ顔があるのなら。
あるいは、少し日常のあわただしさに疲れているのなら。
思い切って仕事を休み、チケットを取って、どこかの湯けむりの中に身を投じてみてはいかがでしょうか。
そこには、PCの画面越しでは絶対に出会えない「本物」の豊かさが待っていますよ。
僕も、またあの湯けむりと、あたたかい笑顔に会いに戻りたいと思っています。
次は地獄めぐりや、もっとディープな地元の食堂も開拓してみたいですね。
温泉と人の縁に感謝した、素晴らしい一日でした。











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