経営を続けていると、切っても切り離せないのが「価格」の悩みですよね。
特に最近の物価高。2022年頃から始まった原材料費の高騰は、2026年の今もなお、僕たち中小企業の経営をじわじわと圧迫し続けています。かつて、製紙メーカー各社が相次いで値上げを発表した際、うちもやむを得なくクライアント様に印刷費用の値上げをさせていただきました。
「原材料が上がったから、その分だけ値上げさせてほしい」そう取引先に頭を下げるのは、経営者として本当に心苦しいものです。「価格を上げれば、長年付き合ってきたクライアントが離れてしまうのではないか」という恐怖。これは、真面目に商売をしてきた社長さんほど、本能的に感じてしまうものじゃないかなと思います。
でも、最近発表された2026年の最新論文『The Impact of Pricing Strategies on the Growth and Sustainability of SMEs』を読んで、僕は確信しました。これまでの「積み上げ式の値付け」こそが、実は僕たちの未来を奪っていたのかもしれない、と。
今日は、この研究が示す「利益率18%向上」という驚きの数字と、僕が大切にしている「本物の価値」の考え方を交えながら、これからの時代を生き抜くための価格戦略についての最新研究論文のお話ししたいと思います。
なぜ「コストに利益を乗せる」だけでは、会社を守れないのか
僕たちが長年慣れ親しんできた「コストプラス法」。仕入れ値に人件費、それに少しの利益を乗せて販売価格を決める。一見すると、誠実で堅実な商売のやり方ですよね。僕もかつては、それが「クライアントに対する誠実さ」だと思っていました。しかし、この手法には大きな落とし穴があります。
第一に、それは「自分たちの都合」で価格を決めているということ。 第二に、「顧客が受け取っている喜びや利益」を完全に置き去りにしているということです。論文では、持続可能な成長を遂げている中小企業は、共通して「コスト」ではなく「価値」を起点に価格を決めていると指摘しています。コストだけで値決めをすることは、せっかくの「価値」をドブに捨てているのと同じ。これって、すごくもったいないことだと思いませんか。
「価値ベースの価格設定」は、暴利ではなく「納得」
では、最新の研究が推奨する「価値ベースの価格設定(Value-Based Pricing)」とは何なのか。それは一言で言えば、「顧客がそのサービスによって、どれだけ得をするか」を金額に換算することです。
例えば、僕たちのデザインの仕事で考えてみましょう。「パンフレットを1冊作るのに、何時間かかったからいくらです」というのがコストプラス法。一方で、「このパンフレットによって、クライアントの成約率が上がり、年間で1,000万円の利益が増える。そのための投資として100万円です」というのが価値ベース法です。一見、高く感じるかもしれません。でも、クライアントからすれば「1,000万円稼げるなら、100万円の投資は安いものだ」という納得感が生まれます。
論文によれば、この考え方を導入した中小企業は、従来の方法をとっている企業に比べて、利益率が平均で18%も向上しているそうです。18%の利益。これは単なる数字の増加じゃありません。大切な社員の給与を上げたり、次の10年を生き抜くための新しい設備に投資したりするための、かけがえのない「体力」になるんです。
18%の利益増を達成するために、僕たちが取り組むべき3つのこと
具体的にどう変えていけばいいのか。論文の知見を、僕たちの実務に落とし込んで整理してみました。
ステップ①:価値を認めてくれる「誰か」を見極める
「すべての人に同じ価格で」という平等主義は、時として中小企業の首を絞めます。価値がわかる人には、高くても喜んでいただける。薄利多売の罠から抜け出し、「あなただからお願いしたい」と言ってくれる特定の顧客にリソースを集中させる。これこそが、社長の重要な仕事ですよね。ターゲットは絞る必要があるのです。
ステップ②:顧客の「不の解消」を数値化する
顧客は、商品・サービスそのものが欲しいわけではありません。その先にある「問題解決」を求めているんです。
- どれだけの「時間」が浮いたか?
- どれだけの「不安」が解消されたか?
- どれだけの「ブランド力」が手に入ったか?
これらを可能な限り、数字で考えてみる。そのためには顧客の問題を解決できるレベルに自社の強みを徹底的に磨く必要があります。
ステップ③:「物語(ナラティブ)」で説明責任を果たす
価格を上げる時、「原材料が上がったから」という説明は、できれば避けたいものです。それは相手にとって「単なる負担増」でしかないからです。
「この価格にさせていただくことで、より精度の高いサポートが維持できます」
「最新の設備を導入し、御社の納期短縮にさらに貢献するためです」
そんなふうに、「顧客の未来にどう貢献するか」という物語を語ること。誠実に向き合えば、真のパートナーであれば必ず理解してくれるはずです。そのためには強みをターゲットに正確に伝えるデザインを活用したブランド戦略が必要です。
2026年、AIとどう付き合うか
今回の論文で興味深かったのが、AIを活用した価格設定についてです。今は中小企業でも、安価なAIツールを使って「顧客が納得する最高値」をデータから算出できる時代になりました。「ベテランの勘」も大切ですが、客観的なデータという「根拠」を持つことで、僕たち経営者は自信を持って価格を提示できるようになります。デジタル化への投資は、もはや贅沢品ではなく、会社を存続させるための「必須科目」と言えるかもしれません。
価格を決めるということは、単なる事務作業ではありません。それは、自社の技術、サービス、そして何より一生懸命働いてくれている社員たちの努力に対する、「経営者の誇りの指標」そのものです。
「値決めは経営である」という言葉は稲盛和夫氏の言葉ですが、重みがありますよね。安売りを続けることは、知らず知らずのうちに社員へ「君たちの仕事はこの程度の価値だよ」というメッセージを送ることになってしまいます。それはあまりにも悲しい。逆に、適切な価値を認められ、適正な利益を得る。その利益で、社員の環境を整え、さらに高い技術で顧客に還元する。この「正の循環」を作ることこそが、僕たちが目指すべき誠実な経営の姿ではないでしょうか。
2026年の研究が示した「利益率18%の向上」という果実は、決して夢物語ではありません。コストという「過去」に縛られるのをやめて、顧客に届ける価値という「未来」に目を向ける。その少しの勇気が、会社の10年後を変えるはずです。
「僕たちの仕事は、お客様のどんな幸せに貢献しているだろうか?」
今日、一度ゆっくりと考えてみませんか。
参考文献:
- The Impact of Pricing Strategies on the Growth and Sustainability of SMEs (2026).






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