2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、経済産業省は公共施設などで使われる案内用の図記号を外国人にも分かりやすくするということで、温泉マークをかえるとの事。これまでの温泉の記号は、外国人には「温かい料理」に見えるという理由で、人の姿を入れたものに変えようか、という話があがった。
これに、別府市を始めとした多くの団体から反対の声が上がり12月6日には経済産業省で会合が開かれ、温泉マークの変更は見送られた。
いったいなんで「温かい料理」に見える外国人のために、伝統的でほとんどの日本人に愛されてきたデザインを変えようとしたのか理解できない。
日本国民は古来から温泉を愛してきた。僕も温泉は大好きだ。先日仕事のついでに別府に行き、温泉巡りをしてきて、町のあちこちに温泉マークを目にした。
確かにピクトグラムの機能としては、あらゆる国の大勢の人に、正確に認識してもらえるようなデザインが要求される。なので、案内所のマークが?からiの形になったり、さわるなのピクトがこちらに来るな、という意味に取れるので、デザインをかえる、というのは理解できる。そのようにした方が良いのかもしれない。
しかし、温泉マークは?や手のひらのマークとは違う。
何が違うのかと言えば、歴史が違う。文化が違うのだ。ウイキペディアによれば、温泉マークの紀元は1661年の群馬県安中市にある磯部温泉が「温泉マーク」発祥の地であるとされている。地形図に温泉マークが採用されたのは1884年である。様々な日本の芸能、文化、広告、生活の中に入り込んで、日本独自のデザインとして確立されているカタチなのである。ピクトグラムが生まれたのは、1963年の東京オリンピックの時である。たかだか53年だ。温泉マークは355年の歴史があるのだ。それを変えてしまえ、などという暴挙に出ようとした役人は許せない!
そもそも、新しい温泉マーク案のデザインは間違っている。
温泉は普通、日本の常識では男女分かれて入る。このマークは家族が一緒に入っているので、家族風呂のマークだ。伝統的な温泉は男女別なのだ。日本人はみんなファミリーで温泉に入るという間違った文化を外国人へ伝える事になるだろう。デザイン的にも、縮小使用に耐えらえないので、3人ではなく親子2人でデザインするべきところだろう。
郷にいれば郷に従えで、日本の文化に魅力を感じて、観光に来るのであるからこそ、日本の文化をそのまま受け入れてもらうべきなのだ。暖かい飲み物に見えるけれど、実は温泉なのだと、学んで、新しい発見をしてもらい、文化の違いの楽しさに面白さを感じて貰えば良いのだ。温泉マークを飲み物と勘違いしたとしても、何の命の危険性はない。
海外に行くと、杖に蛇が巻きついた気味の悪いマークが病院を表すとか、ラッパのマークが正露丸ではなく、郵便を表すとか、日本の文化と違う事こそが面白い。
違うという事が、個性であり、違う事を受け入れる事が豊かな感性であり、旅の醍醐味であり、文化の深さなのだと思う。
明治維新の時の明治政府のアホ役人が、西洋かぶれして、日本の伝統文化をないがしろにしてしまったような愚行を二度と行わず、日本の良さを世界に発信すべく、日本のお役人は働いてもらいたいものだ。
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