日本は先人国で最も生産性が低くて貧困率が高く、日本の生産性は先進国中、最低クラスだという。
生産性とは、つまり多くの数の人が働いている割には、稼ぎが少ない。 長時間働いている割には、稼ぎが少ない。ということだ。
ちょうど今、電通の労働環境が問題視されて、注目されている。 自殺した社員の母親の会見で「命より大事な仕事はない」という言葉があったが、全くその通りだ。命を削って働いても日本の生産性は世界の27位だという。 たしかに先進国の中では生産性が低い、労働時間は長いというのはずいぶん昔から言われてきた。
この本で興味深かったのは1990年には韓国の2.4倍も高かった生産性な現在では1.04倍まで低下している。このままだとあと2、3年で韓国に抜かれてアジア第4位の生活水準にまで低下するだろうと言っていることだ。
日本の順位は先進国中の27位。28位が韓国。しかし人口は日本が1億2700万、韓国は5100万人。働ける人の労働力人口で比較してみると、日本は6600万人、韓国は2500万人。つまり、日本の38%の人が日本とほぼ同じ生産性を出して働いている。ということ。逆に、日本人は韓国人の3.8倍生産性が悪い、ということだ。
その原因を著者は人口減少問題であると言っている。
GDP =人口×生産性なので日本人の数が減る中で経済成長するためには生産性を上げる必要がある。本来なら人口増加が止まった1990年には生産性向上型資本主義を目指すべきであった。95年以降日本経済が横ばいに推移している理由はここにある。人数が増えていないのに生産性も上がっていないのでGDP は横ばいのままである。と述べられている。
日本の国民性や能力は非常に高い。しかし、このポテンシャルが生かされていないのはなぜか。その原因は経営者であると述べている。「ものづくり」ということばに依存するのも危険である。いいもの作れば売れると勘違いしたままなのである。
僕の身近なところでも、いいものを作っているのに、売れない。という相談が多い。売れなければ稼げず、GDPの数字も上がらない。僕の仕事はいいものをデザインによって「見える化」して、広く知らしめることなのだが、この重要性に気がついていない中小企業の経営者は依然として多い。
経営者は自分の専門の世界ではプロだが、経営者としてはど素人なのだ。しかし、それは仕方がないこと。なぜなら、経営者は社長だけれど、経営を勉強していない。だから経営がわからない。当たり前のことだ。社長には誰でもなれる。しかし、経営者は経営ができなければ経営者にはなれないのだ。
ビジネスセミナーや中小企業庁などの支援事業、商工会議所などの支援団体や中小企業診断士を無料で派遣してくれたりも行ってはいるが、そんなもの付け焼刃でしかない。 経営コンサルタントにお金を払って、マンツーマンで教えてもらうまでは、自己流の経営なのである。
今までは自己流でもよかったのだ。 しかし1990年代から時代は変わりはじめている。この失われた20年というのは、経営者が今までとやり方を変えることなしに変化しなかった20年だったのだと思う。著者は「日本病」という言葉を使っているが、外人から見れば、そう見えるのだろう。
経営者はもっと経営の勉強をするべきだ。僕もデザイナーであるが、20年間会社を経営してきた。クライアントの売り上げを上げるお手伝いをしてきた。 しかし、経営のプロかといえば、まだまだ勉強しなければならないことは山ほどある。自分の専門分野の研鑽を重ねつつ、経営者として経営の勉強をしていかなければ、日本の生産性は上がっていかないだろう。昭和のやり方ではダメなのだ。いろんな意味で意識も知識も行動も変わらなければならない。国は景気を良くするために金融政策を盛んに行うが、こう言った部分にも力を入れて欲しい。
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