脱原発ポスター展というサイトを見ました。子どもから、プロのデザイナーまで、たくさんの原発反対の思いをポスターにして、並べています。ポスターというメッセージを伝える機能を最大限に生かした力作がこれでもか、というほどの枚数が集まっています。最近ポスターなんて見ないよなあと思っていましたが、久々にポスター鑑賞してしまいました。
このサイトは「レアリゼ」という市民団体が主催して開いたものです。きっかけは文科省と経産省の「原子力ポスターコンクール」に反対しようと企画を立てていたところに震災が起きて、急遽ポスター募集を始めたと言うことらしいです。
様々なメッセージがいろんなアイデアで表現されていて、多くの人の怒りや悲しみの声が聞こえてくるようです。
しかし、僕がもっと胸をつかまれたような気持ちになった事は「原子力ポスターコンクール」に応募した子ども達のポスターです。
昨年のポスター募集のサイトに行ってみたら、昨年のポスターコンクールのサイトがすでに消されていました。募集案内のPDFの表紙にあった子ども達の絵を見ると、「地球に優しいエネルギー」とか、「きれいな空気ありがとう」とかいうコピーと、笑顔の女の子、お花畑、笑っている地球などといったビジュアルで、幸せいっぱいの雰囲気です。子どもらしい、のびのびした素晴らしい作品です。
ポスターの募集案内にある子ども向けの資料には、原発に都合の良いことだけが列挙されています。放射性廃棄物に関しては、放射線は「遠い宇宙から飛んできたり、大地や食べ物から出たりしています。」といった説明だけでお茶を濁しています。
「5重の壁で安全を守る発電所」とありますが、今回の福島ではメルトダウンしてあっけなくすべて崩れましたしね。
原子力発電環境整備機のサイトでは、子ども向けの洗脳アニメで、女の子が博士に尋ねる「高濃度放射性廃棄物ってなに?」の答えが「みんなのまわりにもある放射線を出す廃棄物のことを言うんだ」と、さらりとすまし、さっぱりわからないように作ってる。
さらに、今話題らしいけれど、頼れる仲間プルト君——プルトニウム物語の映像は、しきりに、怖くないよ、安全だよと言う詭弁ばかり「飲んでも大丈夫だけれど(本当か?)吸い込まないで!」とプルトくんは言うけれど、今、僕たちは毎日吸い込んでいる。
ちなみにこの広報ビデオは2004年に内容に関して不備がある旨で市民団体に告発されています。
かわいいプルト君と「α線放射」という恐ろしいことばとのミスマッチ
これらを作った人達はどう考えているのかな?
僕は独立してから、たばこと原子力の仕事は絶対に受けない仕事として決めています。
デザインは、社会に影響を与える力を持っています。世の中に良い影響を与える物ならばその力を大いに活用するべきですが、悪い影響を与える物に対してはデザインの力を用いて荷担したくありません。
子ども達は、いいや、大人だって、こんな情報の出され方をしては信じ込んでしまい「原子力ポスターコンクール」のような絵を描いてしまう。これらのポスターを書いた子ども達に罪はないし、今となってはこれらの絵が皮肉たっぷりのコメントであちこちのブログで笑いのネタになってしまっている。子ども達がかわいそうでしかたない。彼ら、彼女らは今はどんな気持ちでいるのだろうか。
原発の賛否の議論は昔からあるので、大いに議論するべきだとは思うが、判断力のない子ども達に一方的な情報を与えて、ポスターを作らせるという行為はいかがなものか。
今年のポスターコンクールは、中止になったということだ。まあ、あったりまえですね。
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