NHKの教育テレビで毎週土曜日の朝7時から「デザインあ」という15分の子ども向け番組をやっています。
子ども向けとはいえ、なかなか深い番組です。
果物や、ガム、ランドセルを細かくパーツに分解して、きっちり並べていく「解散」のコーナーとか、本の形はそもそももなぜこんな形なのだろうという検証のコーナー。このコーナーだけ、唯一子どもの世界っぽいナレーションだけど、男女の掛け合いセリフのテンポが小気味よい。
風呂敷の伝統的な包み方のバリエーションを様々な形の物を何種類も包んで見せたり、これは風呂敷の美しさもさることながら、1枚の布がこんなにたくさんの形態を包み込む日本の伝統的な知恵やアイデアに驚いてしまいます。
おもしろいのは「デッサンあ」というコーナーです。ひとつの物をたくさんの人が囲んで、デッサンするのですが、様々な視点から物を見ることで、物の様相がぜんぜん変わって見える事の面白さ、そして各人の千差万別の個性がデッサンに現れる、表現のバリエーション。デッサンを描いている真剣な顔のカット。
プロのデザイナーへのインタビューもあり、デザインするときに気をつけていることは?デザインの心を磨くアドバイスは?など本格的な質問をぶつけています。「身の回りの物の仕組みを観察してみましょう」とか「好きな物を100個上げてみましょう」といった解答をしてくれるのですが、子ども達はどんな気持ちで聴いて、見ているのかな。
音楽のクオリティが高い。僕がメチャメチャ好きなコーネリアスが手を抜かない仕事をしています。iPodに入れて持ち歩きたい。監修はNHKの「日本語で遊ぼう」という子ども番組でグッドデザイン賞を取った佐藤卓氏です。
やっぱり佐藤卓さんは凄い。すばらしい。僕がここ何年もの間、一番好きなデザイナーです。
子ども向けに、なぜ今「デザイン」なのか。非常に気になる所です。日本の経営者はデザインのことはさっぱりわからないといった人が多いので、業界では経営者にもっとデザイン教育をするべきだという意見もあがっています。子どもの頃から学校できちんとデザインや審美性に関しての教育が行われることを強く望むのですが、なかなか「図工」や「工作」として優先順位が下の方に追いやられてしまっています。
暮らしの中にあるデザイン、伝統的なデザインを学ぶこと。最近ではデザインを発想するプロセスである「デザイン思考」など、デザインは審美性だけではなく、生活を豊かにするための知恵だし、人と人を結ぶための考え方なのです。この事を学ばせる、というか、楽しく見て関心を持ってもらう事は大切なことで、大人にも関心を持って欲しいと思います。この番組にはNHKの良心を感じました。
こういう番組がもっと社会に出てくるようにならなければなあ。
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