永田町の駅に二つのポスターが掲示されていました。経済産業省、中小企業庁の「下請けGメン」と「下請けかけこみ寺」の告知ポスターです。
半沢直樹がおっかない顔で、「あなたが買い叩いているのはこの国の未来だ」と零細企業をいじめる大手企業に向かって、叱りつけているようです。これは「下請けGメン」という中小企業庁に設けられた相談窓口の施設です。今年は半沢直樹が7年ぶりの続編を4月から放送するというので、番組とコラボレーションしたのでしょう。中小企業の味方の銀行マンは親和性がなかなかぴったりです。
下請けGメンとは、一方的に安い契約を強いる「買いたたき」や、不当な「労務提供要求」などに苦しめられている中小企業・小規模事業者の相談窓口です。
もう一枚はこれも半沢直樹がネジをつまんで怖い顔して「その品質に適正な対価を」と小さな町工場をいじめる大手企業を諭しているようです。こちらは「下請けかけこみ寺」という公益財団法人 全国中小企業振興機関協会が行っている事業です。中小企業・小規模事業者の取引上のお悩みを弁護士が相談にのってくれるという事業で、他にも販路開拓や各種の支援事業を行っています。
日本には「下請法」という法律があり、弱い立場の中小企業に対して大企業があくどいことをしないように、親事業者の禁止行為というものが具体的に決められています。こういうことを知っている経営者はおそらく少ないと思います。
このポスター、黄色と青色にモノクロの怖い顔の写真で、とても目立つ良いデザインだと思います。しかし、メッセージを投げかける相手がちょっと間違っています。
「あなたが買い叩いているのはこの国の未来だ」も「その品質に適正な対価を」のコピーも大企業に向けて発せられたことばです。下請けGメンや下請けかけこみ寺は大企業のための事業ではなく、中小企業のための事業ですから、ターゲットに響きません。
半沢直樹の後ろに中小企業の社長がいて、半沢が大企業に向かって「あなたが買い叩いているのはこの国の未来なんだぞ!」というシーンをイメージしているのかもしれませんね。いや、わかってますよ。理解した上で、僕なら次のようなコピーにします。(↓画像を修正してみました)
「あなたが買い叩かれているものはこの国の未来だ」
「この品質に適正な対価をもらっていますか?」
半沢直樹が大企業を叱り付けているよりも、半沢が中小企業の経営者に向かって、「大丈夫ですか?」「こんなことないですか?」と語りかける言葉の方が訴求力があるのではないでしょうか。
街の中のポスターという媒体は見てもらえる時間は一瞬です。立ち止まってじっくり見てくれません。見た瞬間に「あ、俺のことだ!」と共感を感じていただくためにはメッセージを誰に向けてどう言うのか、が重要になってきます。
大企業にいじめられている中小企業の社長さんがもしいましたら、下請けGメンや下請けかけこみ寺に駆け込んでみたらいかがでしょうか。
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