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日本はやっぱりデザイン後進国

来年9月から開催される「第32回国民文化祭・なら2017」のロゴマーク制作費が高すぎるなどとして、奈良県生駒市の市民団体が国文祭実行委の会長の荒井知事らに対し、510万円の損害賠償を求める訴えを地裁に起こした。
訴状などによると、県が事務局を務める実行委は今年3月、熊本県のキャラクター「くまモン」を手がけた水野学氏にロゴマークの制作を随意契約で依頼し、その費用が540万円かかった点について、「公募や入札を実施していれば制作費は30万円だった」などと主張している。という事ですが、これは何が問題なのだろうか?

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水野氏のデザイン料が高すぎる、という事ではもちろんありません。
知事のトップダウンの随意契約は地方自治法上では、どこまで許されるのか?
という事が論点なのだろうと思います。

水野氏くらいの著名なデザイナーであれば、もっと高くたっておかしくないし、もしも水野さんレベルのデザイナーがデザイン料200万円くらいだったら、日本中のグラフィックデザイナーはやる気をなくしてしまう。

デザイン料金は30万円ぐらいが妥当であるという声が上がっているのも、なんとも寂しい気がする。最初は10万円くらいで良いだろうという事だったが、デザイナーにヒアリングして、30万円に上げたらしい。
自治体なので、税金から高額なお金は出せない。という気持ちや事情は、よくわかります。
しかし、言葉を変えれば、

高額なお金は「デザインなんかには」出す「価値がわからない」ので、 大切な税金は「デザインなんかに」は使うな。そんなの、10万円くらいでいいだろう。

と言う事ですよね。 昨年の東京オリンピックのエンブレムの問題のときもそうだったけれど、本当に日本ではデザインの価値が理解されていないのが、悲しくなります。

地方自治法は自治体が契約する場合、入札を原則としています。特定の業者との癒着を生むからでしょう。それは理解できるのですが、安い報酬で公募をして決めるというやり方では、優れたデザインが世の中に出てこない、というのも事実だと感じています。
国民文化祭のキャラクターは例年5万円くらいの賞金で公募しているそうですが、プロのデザイナーは5万円なんかでは応募しません。
ほとんどが素人か、デザイン学生か、売れなくて暇なデザイナーでしょう。だから、公募のマークやキャラクターはクオリティが高くない。はっきり言うけど、クオリティーが低い。

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気象庁のマーク

デザインは社会に広く大きな影響を与えるものであり、 本来ならば、自治体や公共のデザインこそ、クオリティの高いデザインが望ましいのに、日本ではその逆を行っている。
公官庁のマークなんて、本当にどれも酷い!特に気象庁のマーク、気持ち悪い!
日本の優秀なエリートが素晴らしい仕事をしている組織なのに、それにふさわしいシンボルマークをなぜお金をかけて作らないのか?
それは、お金をかける価値観を持ち合わせていないから。後生大事な税金を「デザインみたいなそんなもの」には使う価値を微塵も感じていないから、なんでしょうね。

日本はハイテクでクール、国民の性格も良くて歴史もある素晴らしい国なのに、いまだにデザインに関してはまったく価値を理解していないデザイン後進国であると感じています。

市民団体の510万円の損害賠償って、いったい誰がどのような損害を被ったというのか?
今回もまた、デザインに対するイメージが悪くなり、日本のグラフィックデザイナーこそがとんだ損害を被ったと思います。(もちろん言うまでもないが、水野氏はまったく悪くない。)

デザイン
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熊谷淳一

熊谷淳一

株式会社ノイエ 代表取締役。デザインで経営を伸ばす経営コンサルタント・クリエイティブディレクター。デザインは第5の経営資源としてデザイン経営とマーケティングの研究にいそしむ。 お酒、書と陶芸が好き。 尊敬する人は岡本太郎。
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