美術館・博物館職員、学芸員のみなさんに向けたデザインの研修会のご紹介

集客できるチラシ・ポスターと展示パネルのデザイン

写真:研修会の様子

北海道の南西部にある厚沢部町の町民交流センターにて、道南ブロック博物館施設等連絡協議会様主催の研修会で講師を務めさせていただきました。テーマは「集客できるチラシ・ポスターと展示パネルのデザイン」です。

函館から厚沢部町の会場まで、研修の参加者でもある七飯町歴史館の学芸員のYさんに車に乗せていただいたのですが、その間、北海道のミュージアム事情など様々なお話を伺うことができました。九州の学芸員の方にもいろいろなお悩みを伺ってきましたが、北海道の学芸員さんもほとんど全く同じ悩みを抱えてらっしゃるんだなあと感じました。

例えば

  • 集客したくてもホームページが自治体の管理になっているために自由に更新ができない、時間がかかる
  • 公共の施設だと予算取りが思うようにできず、集客や顧客サービスに満足に配分できない
  • 予算がないために自分たちでチラシや展示パネルを作らざるを得ない
  • 学芸員の仕事は多岐にわたり、非常に忙しい中でチラシを作るという作業は大きな負担  などなど……。

Yさんのお話をお伺いするだけでもとても勉強になりました。

研修会には、約20名ほどの学芸員さんが参加されました。マーケティングについて、チラシやポスター作りのポイントや展示グラフィックについて、グループワークなどたっぷり6時間、実践的な内容で行いました。

グループワークでは、持ち寄っていただいたチラシについて相互評価や改善点の意見交換、発表などを行い、今までとは違った視点でチラシ作りを考えるきっかけになったのではないかと思います。

道南ブロック博物館施設等連絡協議会様のブログ こちらです→ https://dounan.exblog.jp/
研修会の様子も書いていただきました → https://dounan.exblog.jp/32718997/

写真:研修会の様子

セミナーの内容

対象 美術館・博物館職員、学芸員のみなさん
内容 ・【グループワーク1】 他館のチラシとポスターデザインの相互評価
・【講義】チラシとポスター作りの基礎1〈チラシの4つの重要要素〉
・【講義】チラシとポスター作りの基礎2〈コピーとデザインの基本技術〉
・【グループワーク2】 チラシとポスターの改善点を話し合う
・【グループワーク3】 チラシとポスターの改善点の発表
・【講義】チラシ・ポスターの添削プロセス
・【講義】展示グラフィックの基礎〈展示パネルの制作ポイント〉
・振り返り
研修会で使用したスライド

受講生の皆様の声

顧客目線に立った上で、自分が何を周知したいのか、自分が周知したいことをどのように受け止めてもらいたいか、ということを真っ先に考えなければならないのに、配色やレイアウトなどの技術的なことに習熟しなければならないと考えていたことが、根本から誤っていたと感じています。

自分が提供する講座や展示が、来館者にどのような価値を提供できるのか、というところからしっかりと考えて、事業の企画を行いたいと思います。

チラシ・ポスター作成では「わかりやすい情報提供」を心がけていましたが、そのため、グリッドに沿うようなガチガチのレイアウトが多かったように思います(レイアウトの際にはグリッドを背景に組んでいます)。「動きのあるチラシ」にはほど遠く、いつも同じようなチラシになっていたように思います。ただ、単に規則性を壊せば動きが出るかといえば、きっとぐちゃぐちゃになってしまうんだろうなあ、とも感じました。

1日お話をいただきましたが、きっとお伝えしたい内容は、とても1日では伝えきれないのだろうなと思いました。私も十分には受け止めきれていないように思います。継続的に勉強していく必要を痛感しました。

また、今回の講義を通して、事業に対する向き合い方を再考する機会を得ることができました。ありがとうございます。

(石井 淳平 様)

印象に残った内容は、
対象をより一層明確にする事。
文字列の美しさを配慮する事。
です。

気付いたら17時でした (^^;) それだけ充実したセミナーだったと感じております。それくらい濃い内容でした(^^) 有り難うございましたm(__)m

今回のセミナーで失敗例を改善するという方策をとっておられましたが、限られた6時間(あのボリュームでは充分「短かい」)で効果的に印象付けるためトーマス・アルバ・エジソンの「失敗は成功の母」方式を使われていたんですね。参加者は皆、そのエジソン方式で覚えこんだと思います(^^)

(藤田 巧 様)

これまで、ポスターやチラシの作成は、机上で体裁を整えることを主眼に取り組んでいましたが、此度の講座を拝聴し、その先にメッセージを受け取る側の存在を意識することや受け手の立場になって考えることを忘れていたことに気付かされました。このことは、何かをデザインする上でも、博物館を運営することでも共通するマインドであると感じました。こと、公の博物館では忘れがちになってしまう、最も大切な基本姿勢だということを今更ながら再確認できたことは、何よりの学びとなりました。

6時間もの長丁場の講座、本当にありがとうございます。ネットで熊谷さまのご活躍を知り、直接指導を受けてみたいと切望してましたので、此度の講座に繋がったのは本当に嬉しかったです。

デザインという専門的な部分はもとより、スライドの作り込み、講座の進め方も大いに参考になりました。勝手にオマージュさせていただきますので、ご容赦ください。

(山田 央 様)

自分が作成してきたものには、チラシを手に取った人のメリットは何か、という大切なことが抜けていました。企画段階でそれを明確にして、チラシにしっかり入れることで、それなら自分も参加したい・行ってみたい、と思ってもらえるようなものを作っていきます。

マーケティングの要素の中で、メリットについてのお話が特に響きました。今までも、お客様視点を考えてきたつもりでしたが、全然でした。こちら目線で、これなら参加したくなるのではないか、という発想をしていたのだと思います。実際に参加したら、こんなメリットがありますよ、ということをしっかり決めることが重要で、それには対象を絞ることが必要になってくる(メリットは、人によって違う)ことを理解しました。これから、良いものを作っていきたいと思います。ありがとうございました。

(Y.Y. 様)

メリットの提示など、来館者の目線でチラシやポスターを作製していなかったので、今後は来館者の目線に沿ったメリハリのあるチラシ作成を仕事に還元していきたいと思いました。

長い時間にわたり講演いただきありがとうございました。展示会や講座などの周知チラシを「集客ツール」としてではなくただの「お知らせ」程度に考えて作成していたので、今回の講座はまさにチラシやポスターに関する視野が広がり、今までいかに未熟なチラシを作製していたかを実感することができ、非常に有意義な時間となりました。

また、学生の時にはデザインやコピーライトについて専門的に学ぶことがなかったので書籍などを活用して個人的に勉強してみようと思いました。本当にありがとうございました。

(大成郷土館 工藤 大 様)

これまで“いかに少ない文字数でこちらの伝えたいことを伝えるか”を考えながらチラシやポスターを作成していました。しかし、本研修会で文字やイラストのレイアウト・配色・文字体などに気を付ければ、文字数が多くても相手が興味を持って見てくれると知りました。

また、目を通してくれるチラシを作るには、定めたターゲットの立場に立つことが重要だと理解しました。一見、当たり前のように思えることですが、知らず知らずの間に“多くの人に来てもらいたい”とターゲットの幅を広げていた節があります。

今後は、ターゲットがどんな情報がほしいのかという視点を元に、デザインの研究をしながらチラシ作りに励みたいと思います。

パワーポイントはじめ、話のテンポなど聞きやすく、とてもわかりやすい説明でした。

これはチラシやポスター、展示パネルの作成に限らず、専門的な知識を一般の人に伝えることが仕事である私たち学芸員にとって、大変勉強になりました。

私自身の中で、チラシ作成でデザインなどを考えるのはあまり得意ではない=センスがないと感じていました。しかし、今回の研究会を通して、センスがないと感じていたのは、人への見せ方・伝え方を知らなかったことが大半を占めているのではないかと感じました。前の回答でも書きましたが、センスの有無は別にして、情報を伝えるターゲットを絞ること、情報を得る側の視点に立って伝えることを意識することで、伝えたい最低限の情報は組み込めると思いました。加えて、デザインの研究や客観的な意見を取り入れて、より伝わりやすい情報の伝達を心がけていきたいです。

(S.K. 様)

印象に残った内容、気づきは
・コピー=商品の強みであって、それがデザインの前になければダメということ。
・キャッチ/サブ/ボディのコピーに求められる種類が違うということ。普段作っていたのでも分けてはいるが違いについては曖昧だったような気がする。
・展示パネルの制作については字間・行間・フォントなどは試しながら作っていたが壁背景色などはあまり気にしていなかった。

町の広報担当だったころ素人なまま、ああでもないこうでもないと考えながら毎月広報誌を作っていたので、デザインの理論などは聞いていて頭が整理されていくような感じがしました。お役所でもデザインする意識があったほうがいいと考えています(…が、学芸員とか広報とか特殊な業務と思われがちなのでなんとも…)。

(S.T. 様)

これまで、チラシ・ポスターを作るときに下記のような要素を組み合わせて作ることを考えていました。

・人の目を引くデザイン(写真や図、カラーの使用方法)
・必要な情報(開催日時・場所・募集要項)
・イベント趣旨の説明(例えば、自然散策会であれば何を見にいくの等)

ですが、基本的な技術という点は置いとくとしてもチラシの中の要素をどのような順番でお客さんに見せるのか、という視点がなかったように思います。

今回の講習で、お客さんが読んでくれる数行の間にどれだけ面白く、続きが知りたくなる情報を入れるのか……という読んでもらう順番を意識できたことが、とても有意義な学習となりました。

また、イベントの応募がなかなか来ないことに悩んでいたのですが、お客さんは安心しないと来ないという事も目からウロコが落ちた思いです。役所として様々な注意書きを並べる中、そのうえで参加応募が必須となると非常にハードルが高いのかなと思いました。

大変有意義かつ面白い講習を受けることができました。ありがとうございます。

(R.T. 様)

博物館自体が好きな集団に属するため、チラシ、ポスターに具体的な内容を書かないと来ない層がいるという発想がなかなか無かったので、重要な視点を持つことができたと思う。

大まかな概念や集客を意図したデザインの構造などは理解できたが、そうした理論に基づいて制作されたデザインとそうでないデザインとで、どの程度の集客力の差が出たのか数字に基づいたデータが無いことが残念であった。また、チラシに掲載されるキャッチコピーや展示品のアピールなどが博物館体験の誘導になるのでないかといった点について、マーケティング手法と博物館教育論との兼ね合いなどについても解説が欲しかった点であった。

(F.Y. 様)

ポスターは伝えたい強みをストレートに書いて伝えるというのが印象的でした。あまり文字で伝えるのでなく、写真のインパクトで興味を引くのがいいのかと思っていたところがあったので。何が強みかを考え抜いた上に、文章を載せたいと思います。そしてあまり事務的にならないように気を付けたいと思います。

また少しずつ10年以上あまり変わっていなかったチラシを変えるとともに、子供が読めなきゃダメ!という上司を説得したいと思います…。

長時間にわたって講義いただきましてありがとうございました。あの短い時間ですべてをかみ砕いて飲み込むのは難しかったですが、pdfで復習しながら今後のチラシ、ポスター、パネルを作っていきたいと思います。早速木彫り熊についてのA2パネル2枚作る必要があったのですが、行間やフォントなどできる限り時間の許す限り調整しました。文字間までは調整できなかったのが心残りですが、前よりはよくなったと思います。そういった細かいところの調整が自分でできるのがいいに決まっているのですが、やはり難しいのとセオリーの把握が大変なのと時間制限がどうしてもあるので、そこの部分はデザイナーに外注したほうがいいというのを痛感してます。写真撮影から印刷まで全部自営は大変ですが、できるだけいいものを作れるよう頑張りたいです。

(大谷 茂之 様)

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