美術館・博物館職員、学芸員のみなさんに向けたデザインセミナーのご紹介

展示グラフィックと集客ツール

毎年、九州で学芸員さんに向けた集客チラシと展示グラフィックの研修をさせていただいておりますが、この度、山形県の酒田でも研修をさせていただきました。

研修の前日に、今回の研修のお世話をしてくださる一般財団法人地域創造の方と一緒に酒田市立美術館と土門拳美術館を訪れ、各美術館の学芸員さんに解説していただきながら展示物を鑑賞させていただきました。これが一番贅沢な絵画の見方ですね。こんなふうに鑑賞するのはなかなかできないものです。だからこそ、解説パネルやキャプションが重要になってくるのです。学芸員さんが一生懸命考えて作った文章やパネルのデザインが、来館者に対してどれだけ貢献しているのか。なかなか難しい部分もあります。いろいろと忙しい中、学芸員さんが自分たちでこれらを作っているのには本当に頭が下がります。僕もいろんなミュージアムを見に行きますが、痛いものも残念ながら少なくありません。少しでも学芸員さんのお役に立って、一人でもミュージムに来て欲しい。ミュージアムで、芸術や展示物を見て、何かを感じて帰って欲しい。という思いで、僕もこの研修をさせていただいております。

研修には庄内地区のたくさんのミュージアムの学芸員さんが集まってくださいました。これから1年を通して色々な講師が研修を行うのだとか。とても勉強熱心な学芸員さんたちです。

「展示グラフィックと集客ツール」の研修は、チラシやキャプション、展示パネルなどをどんな内容で、どのようなデザイン技術を使って形にしていけば良いのかを講義する内容です。300枚のスライドでわかりやすい説明をして行きますが、いちばん勉強になるのがグループワークです。各ミュージアムの学芸員さんが現在使用しているチラシを持ち寄り、互いに評価し合い、改善点を議論して、今後の集客にどのように応用、活用していけば良いのかを共有するワークになります。なかなか他の館の方とこのような話をする機会がありませんし、客観的に意見を言ってもらうこと自体ないので、目から鱗がぼろぼろ落ちる経験ができます。

九州や山形だけではなく、全国のミュージアムに多くの人が足を運んで欲しい。そのために、全国の学芸員の皆さんに頑張っていただきたいな、と心から思っています。

セミナーの様子

セミナーの内容

対象 美術館・博物館職員、学芸員のみなさん
内容 視覚伝達効果が高い広報物を制作するための「キャッチコピー」「文字の配置・大きさ・フォント」「配色」「紙面構成」などについて、講義、グループワークを通じて学びます。
・グループワーク 他館のチラシデザインの相互評価
・講義「チラシ作りの基礎1」<チラシの4つの重要要素>
・講義「チラシ作りの基礎2」<コピーとデザインの基本技術>
・グループワーク チラシの改善点を話し合い、修正ラフを描く
・グループワーク チラシの改善点の発表+各発表に対しての講師からのコメント
・講義「展示グラフィックの基礎」〈展示パネルの制作ポイント〉

受講生の皆様の声

お客様に伝えたい情報をしっかり盛り込む、メリハリを付ける、フォントにこだわるなど、当たり前の事なのに、意識が足りていなかったと感じました。他館のチラシを比較しながら見ることが出来たのも貴重な経験です。早速、業務で作る文書等でMSゴシックなどを使わないようにしてみました。

具体的な事例が非常に多くて、とても興味深く分かりやすい研修でした!他館の方と具体的な意見交換をしながら進めることが出来たので、非常に参考になりました。

当館は学芸員がいないので、理論的・学術的な根拠なく展示や告知をしていました。常勤で学芸員を採用する余裕がないので、今後もこのような研修を受けて様々な事を学んでいきたいと思います。本当にありがとうございました。

(齋藤 健太郎 様)

高度なテクニックではなく意識を変える事でできる、そんな内容でとても良かったと思います。

これまでのセミナー参加者のその後の動き、連携等の情報共有等があっても良いかと思います。

(岸谷 英雄 様)

・「チラシはアートではない。デザインである」⇒アートは結果を求められないがデザインは結果を求められる
・ターゲットとコンセプトがぴったりあった時に結果がでる⇒そのために届くチラシを作ること
・情報が多くて読んでもらえないのではない⇒読んでもらえるレイアウトを考える
・情報の優先順位でメリハリをつける などなど
教わったことひとつひとつが沁みました。

とても面白かったです。皆さんそうだと思いますが「自分のこと」として聞きました。課題がはっきりしました。お話を聞いて、がっかりしたり、頭を抱えたり。反対に光が差したり(これからやることが明確になったので)。あっという間に時間が過ぎました。何事も「意識」を持って取り組むことが大切だと今更ながら学ばせて頂きました。

羽黒・芸術の森には今井繁三郎という洋画家(祖父)が住んでいた住居兼アトリエを改装したレストランと生前自身の作品を常設展示するために建てた白壁土蔵の「今井アートギャラリー」(美術館)があります。はじめて訪れた方は場所が分かりにくいと言い、二回目からは「隠れ家的な所が好き」とおっしゃいます。民間のため、様々な媒体(例えば行政制作のマップやホームページ)に情報が載っていないことも多々あり、何も隠してはいないけれど、つい隠れてしまう所です。マーケットのほか様々なイベントをして周知をはかっています。

しかしながらせっかく来ていただいたお客さまに対して展示の仕方が不親切であるということが今日の講義を聞いて改めて思いましたので、改善に向けて動いていきたいと思います。

(羽黒・芸術の森 今井アートギャラリー 秋野 わかな 様)

・自己主張ではなく、メリットを考える重要性
・チラシ作成の基本的な考え方メリハリを付けた配置、配色、伝えるべき情報・有益な情報は表に!!etc……
・自分が作ってきたチラシの浅はかさ
・展示キャプション等の文字組も勉強になった など勉強になりました。

大変有意義な時間をありがとうございました。2次会の場でのご意見も大変勉強になりました。

今までさまざまな講義を受けてきましたが、今回ほど実益に結びつくものはありませんでした。技術的な話だけではなく、その技術に結びつく基本的な考え方を教えてもらったことで、今後応用しながらチラシ製作などを行っていけると思っています。

今後、中級編・上級編を聞く機会があれば嬉しいです。コピーライティングの極意も是非!

この度は大変貴重なお話、誠にありがとうございました。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。

(y.s. 様)

印象に残ったのは、「デザインの基本を指導いただいたこと」と「陥りやすい失敗の例を教えていただいたこと」です。

セミナー後の懇親会で、熊谷先生が仰った、日本人は日本の凄さ、日本文化、日本人の良きメンタリティに気付いていないという事を思い返しています。

地方のミュージアムはさらに同様の現象、つまりその地方の持つ優れた地域資源に気付いていないとも思います。チラシはコミュニケーションだと教えていただきましたので、自らの地域に誇りをもって情報発信していきたいと思います。どうもありがとうございました。

(s.k. 様)

チラシの表面にもっと情報を載せるべきなのだということや、展示の魅力を伝えるキャッチコピーの大切さが印象に残りました。

また、お客様の立場になって、文字組の綺麗さや展示のイメージに合うフォント選びを意識したいと思いました。そうすることで見やすく、展示する側の意図が無理なく伝わるデザインにしていきたいです。

大変勉強になるセミナー内容でした。チラシデザインの改善への取り組みを通して、展示はどんな人をターゲットとするのか、どうおもてなしするのかということをより深く考えていきたいと思います。

また、地域の学芸員等の方々と一緒に話し合うことで、それぞれの施設のデザインの工夫や悩みなどを直接聞くことができ、参考になりました。貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございました。

(k.s. 様)

当施設自体がブランド力を持っている…という自負から意識していなかったが、来館者の高齢化と若い人への認知度の低下をあるので、もっと意識的にブランディグしていく必要があると感じました。

チラシや展覧会開催の際には、今回はこれがテーマです!と大きく打ち出すことが多かったが、もっと情報の取捨、大事なことはなにか、Yes,Noだけにならないようにお客様視点でなければならないと再認識できました。

キャプションの作り方は、すぐにでもスタッフで情報共有して取り掛かりたいと思うほど、とても参考になるお話でした。

スタッフ間の感覚でしか良し悪しを判断出来ていなかったチラシですが、今回のお話を聞いて、色彩やポイント、余白など感覚だけではない判断基準を意識することが出来ました。

チラシのデザイン、どこに注目すべきか、見やすいキャプションなど、すぐに実践できることから、経営の根幹の意識づけまでたくさんの気付きを得ることが出来、とても有意義な講義でした。ありがとうございました。

(h.m. 様)

・イベント内容の周知だけでなく、ほかの可能性を犠牲にして来館するメリットを示す。

・お客様は商品について多くの情報をもとめている。文章を読んでもらうのに必要なのはデザイン。 → 説得力がありました。

・グループワークの時間とテクニック面のお話 → 意見交換を通し、チラシ作成に必要な要素のうち、自分の場合は特に「メリハリ」に注意すべきだと分かりました。今後他館のチラシの観察や、ジャンプ率や余白の取り方の模倣(練習)により、感覚をつかみたいです。

今回は大変有意義なお話を有難うございました。

子どものころから美術館の美しいチラシが好きで、コレクションしていました。就職後も、①集客を左右する、②会期終了後も来館者の手元に残る、という点で展覧会チラシの重要性は意識しており、お客様が手元に置きたくなるようなチラシを作りたいと考えていました。(集客のためのチラシに必要なのは美しさだけではないと、今回学びましたが。)

しかし、いざチラシを手がけてみると知識や技術の不足、館内でのブラッシュアップが難しいことなどに気がつき、ひとりで悩んでおりました。セミナーのご案内をいただいた時、まさに自分のための講座のように感じました。無料という点も非常に有難かったです。

セミナーへの参加により、たくさんの役に立つ知識や考え方を学ぶことができただけでなく、同じ地域の学芸員のみなさんも同じ悩みを抱えているのだと分かりました。

また、自館の他職員とも情報を共有したいと考えています。

今回の講座は基礎編だと捉えております。チラシ作りや展示グラフィックについて、より発展的なお話もお聞きしてみたいです。

(g.m. 様)

ミュージアムの広報物はインフォメーションではなくコミュニケーションというお言葉がとても印象に残りました。展示を作るときには来館者はこういうところを知ったらもっと作品を楽しめるのではないかなど考えながらやっているのですが、広報物に対してはそういった意識はなく、お知らせするということばかりに意識がいっており、来館者のメリットという視点が圧倒的にかけていたことに気づかされました。

また、チラシやパネルはできるだけシンプルにという意識で作っていましたが、文字量が多くても、読ませるデザインにすれば読んでくれるというお話も印象に残りました。これまでもできるだけ工夫はしてきましたが、行間や字切れなどもっと細かいところまで意識して、もともと作品のファンでなかった人にも読んでもらえるような、そしてそこから作品を知ってもらい、来館者の世界を広げてもらえるような展示を作っていきたいと思いました。

デザインについてきちんと学んだことがなく、過去のデータや他館のやり方、雑誌のデザインなどを参考に作ってきたため、これでいいのかなという疑問がたくさんありましたが、この度のセミナーで、やりがちな間違いをたくさんやっていたことや、勘違いも多かったことに気づかされました。実用的なお話が多く、本当に参考になることばかりで受講してよかったと感じました。

当館では展示パネルは縦書きなので、展示グラフィックの講義の際、縦書きの例も出してくださるとありがたかったなと思います。

(f.s. 様)

仕様書作成のためのチェックシートがあることで、作成しようとする広報物の狙いを改めて組織内で確認することができるので良いと思いました。あると便利なのはわかるのですが、なかなか様式まで作成するまで気が回らないことが多いので。

講義とグループワークのバランス配分はちょうどよく、参加者の満足度も高そうに見えました。

あるとよいかなと思ったこととすれば、チラシの事例紹介の際、他の文化芸術ジャンル…例えば、クラシック音楽や演劇、ダンスなど…との比較があれば、美術の展覧会チラシの特徴というのがわかりやすくなるのかなと感じました。人にもよりますが、学芸の方はあまり他のジャンルのチラシを見る機会は少ないと思った次第です。

(t.a. 様)

デザインの基本的な技術についての内容も大変勉強になったが、そもそも元となる事業そのものの主旨や意図、展示内容、来場者へ伝えたい印象などを、デザインする側がしっかり理解したうえで制作しなければ効果的なデザインは生まれないのだなと気が付けたことが、とてもためになりました。

広報デザインについての重要性や、記載事項の優先順位といった根本的な問題から、職員がすぐにでも実践できそうな技術まで幅広く教えていただき、とてもためになりました。ありがとうございます。

(a.t. 様)

・「日曜美術館」という手法:視聴者目線で制作される番組だから40年を超える人気の長寿番組として評価されているので、確かに、この手法を取り入れるべきだと思いました。
・「メリット」を明らかに:博物館に来館する魅力を上手に伝えるために、自館の魅力をもっと客観的に知るべきで、職員の意識を変える必要もあると思いました。

一部の大規模施設を除き、博物館は美術館よりも旧態依然としていますが、致道博物館は近年、「刀剣乱舞-ONLINE-」コラボやTwitterの運用により、従来の来館者層とは異なる年齢層のリピーターを獲得し始めたと思っています。

時流を活用しつつ博物館のあり方を考え、今回ご教授いただいたノウハウを実践していけるよう努力していきたいと思います。

(a.s. 様)

展示を企画する段階から、世界観を明確にして演出すること、イベントに来てもらうための動機付けなど意識してやってみようと思いました。

また、これまでチラシをほとんど感覚的に作っていたのですが、配色やフォント、メリハリをつけることなど、意識して作ってみようと思います。

これまでチラシをはじめ、イベントや広報のやり方が毎回同じようになっていたのですが、どうしたら読んで、信じて、行動してもらえるかという考えが根底にあれば、やるべきことも変わってくるのかなと思いました。すぐに取り組めることから試していきたいと思います。

(a.k. 様)

マーケティングを意識した、広告の制作方法が大変参考となりました。

この度は、大変お世話になりまして有難うございました。お陰様で有意義な研修会となりました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

(a.a. 様)

主催者様の声

これまでチラシの表は極力シンプルにと心がけてましたが、その考えを捨てて、情報を盛り込んだチラシの表を作っていきたいと思います。

キャプションや展示パネルの文字数やフォントにいつも迷っていたので、勉強になりました。

長時間の講義でしたが、あっという間の時間でした。目から鱗な情報ばかりで大変勉強になりました。チラシのつくり方等は恐らくどこの美術館でも悩みどころだったと思いますが、他館の学芸員同士で語り合うこともなかったので、良い機会となりました。

他の参加者からも好評でした。開催して本当に良かったです!

(酒田市美術館 武内 治子 様)

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