学芸員さん向けデザインセミナーのご紹介

展示グラフィックと集客ツール

毎年、九州産業大学様の主催で行われている美術館や博物館の学芸員さん向けの研修会「展示グラフィックと集客ツール」です。2020年は宮崎県での開催でした。これで沖縄を含めて、九州の全県を一巡しました。

新型コロナの影響で中止になるかなと思っておりましたが、九州産業大学の緒方先生の熱心なご努力によって開催が実現されました。

マスクの上にフェイスシールドをして6時間の研修を行いました。

グループワークの様子
グループワークの様子

いつもなら5、6人のグループで議論しながらグループワークを行うのですが、今年はフィルムのついたてを立てて、ついたて越しに2人グループでのワークとなりました。しかし皆さん、形は違えども熱心さは例年と変わらず、非常に良い議論をしていただき、多くの学びをしていただいたようです。

こういう事情ですから、1時間ごとに休憩を入れて、その都度全員部屋から退出していただき、空気を取り替え、手洗いうがいを徹底してもらい、発言に使用するマイクもいちいちアルコールで拭きつつと、いつもよりもコロナ対策で大変な作業になりました。いつもならば、僕も参加者の皆さんのそばに行き、個人的にアドバイスやたくさんお話をするところ、今年はなるべく近づかないように、なるべく個人的に話しかけないよう、注意いたしました。

このコロナ禍で、全国のミュージアムも、予約制で入場制限を行い、来館者が減っているのでしょう。お客さんからすれば、ゆったりとみられるので良いこともあるかもしれません。学芸員の皆さんも新しい時代にふさわしい、新しいチラシのデザインや展示パネルのデザインを開拓して行って欲しいと願っています。

セミナーの内容

対象 広報物制作に悩む博物館・図書館・公民館・学校関係者、学生等
内容 視覚伝達効果が高い広報物を制作するための「キャッチコピー」「文字の配置・大きさ・フォント」「配色」「紙面構成」などについて、講義、グループワークを通じて学びます。
案内 研修会の受講者募集チラシPDF

セミナーのスライド
基礎となる考え方、コピーや色のお話、具体例なども交えてわかりやすく伝わるようスライドにしました。

受講生の皆様の声

来館者を置いてきぼりにした広告が数多くあること、また、自身もそのような広告を作っていた時があったのではないかと、今までを振り返り反省しました。

デザインは「読みづらい」「分かりにくい」など、見る人にとっての躓きや肉体的・精神的な負担を軽くすることが本来の目的であり、そこに気付くための視点、解決するための知識・技術が必要であるということを改めて感じました。来館される方のニーズやメリットは何なのかを考え、それを知ろうとするところから始めてみようと思います。

そして、「価値」のある経験を提供することが施設本来の役割であると再認識しました。

なかなか他館のチラシに講評する機会はないので、なんだか新鮮でした。大人数でのグループワークより気楽でより自主的に動けたかなと思います。

デザインを本業でされている方に研修をしていただく機会もなかなかないので、より専門的なところまでお話をお聞きしたいなと思いました!今回はイラレやワードなど、使用しているソフトの幅も広かったので、レベルにあった内容をより詳しく聞いてみたいなと思いました。

まだまだ教えていただきたいです!ありがとうございます!

(y.h 様)

今回の熊谷先生のお話を聞いて、改めて「チラシに込めるべきモノ」について考えさせられました。どこか自分の中で、チラシを作成し、印刷し、関係各所に配布して、「あぁ終わった終わった」と満足気にひと息ついている自身に気づかされた感があります。

講話のなかにあったように、チラシを手に取る人は表面の十数秒で判断するというのに、ご指摘の通り作り手(学芸員)が伝えたいこと、見た方が来館したくなる表記などがとても不足していたことを痛感しました。

当館は所蔵資料も少ない小規模館のため、展示にあわせたチラシもこじんまりとしていたのですが、だからこそお越しになる方に強くメリットを感じて頂ける展示を作り、その想いをチラシに乗せて届けなければと思いました。

また、他館のチラシを講話の中でのポイントを踏まえてみると、見え方が全く違うものとなり驚きました。良いデザイン、悪いデザインを解説を踏まえて見ていくことで、具体的なイメージが出来、より理解が深まりました。

私自身はこれまで図工や美術の通知表は1~2ばかりの低空飛行でしたので、「デザイン」といわれると身構えておりましたが、講話の中にありましたように書体・大きさ・配色など抑えるべき基本を示していただいた事で、まずは既存の改善点を図り、今後の展示に取り組んでいきたいと考えております。

キャッチコピーは自身のセンスがなく道のりが遠そうですが、出来るポイントから取り掛かり、チラシだけでなく展示パネルについても既存のものを改良していきたいと思います。

わたくし共の世界(業界)では、良いもの(展示)であれば入館者(収益)が低くても気にしない風潮が残っていたりしますが、それは考えてみると広報への力不足を顧みない悪しき慣習(?)なのかもしれません。一方で、中小規模館ではそもそも人手が足りず、何もかも学芸員がしなければならない所謂「雑芸員」の状態である事も事実で、そういう現場ではチラシなど広報関係も当然学芸員が担わなければなりません。かと言って、デザインや印刷を助言してくれる先輩がいるわけでもなく、私自身も暗中模索の中で「これで良い」「これくらいで良い」というような気持ちにとらわれチラシを作成した展示もありました。
そんな中、今回の熊谷先生のお話は専門的ながら大変分かりやすく、かつ我々の意識のズレや改善点などをワークショップを通じて教えて頂ける機会となりました。

先生が講話の中で示した数々のポイントを全て一同に実施できる器量は自身にはないのですが、まずはポイントを押さえ、表面から改善に取り組み、今後の展示を行ってく中でお客様にとっての「良いチラシ」というものを作り上げていきたいと思っております。

個人的な感想ですが、ぜひ熊谷先生のお話を3~4年後にまた受講して、「ココは改善出来たな」「ココはまだまだ出来ていないな」と振り返りが出来ればなと思っております。

今後は更なるSNSの発達などによってチラシの役割や比重も変わっていくのではと感じております。そのような中でチラシが変わる点や変わらない点もあるかと思いますし、SNSやHPにおける広報やデザインなどについても先生のお話を聞いてみたいと思いました。

先生のお話は全国で悩んでいる学芸員に是非聞いていただきたい内容だと思いますので、この度は遠路はるばる南国・宮崎までお越し頂きましたが、是非違う地域でもご講演頂ければと願っております。

(k.t 様)

お客さん立場でチラシを作成することが集客に繋がることができると学びました。配色でチラシのイメージが変わることで、今後の仕事に生かしたいと思います。

先生の講義がとてもわかりやすかったです。チラシの添削もずっと「なるほど」と感じました。非常に有意義な1日を過ごしました。ありがとうございました。

(t 様)

印象に残ったのは、「ミュージアムのチラシにありがちなパターンを壊す」ということです。

展覧会のグラフィックデザインを自分でやらなければいけないと言われたときに、どうしたら良いか分からなかったので、他館の展覧会チラシをたくさん見て、フォーマットに載せるような感覚で作りました。そうすれば、メインビジュアルの作品の強度に支えられて、それらしい展覧会チラシは作れるものの、人の心に届くものではなかったことが分かりました。一方的に言いたいことを言うものではなく、双方向のコミュニケーションを促すものだという考えは目から鱗でした。

講義を聞きながら頭に浮かんだのは、ネット通販などの広告です。商業デザインには今回教わった様々なテクニックがちりばめられていることに気づきました。ミュージアムだけでなく、日常目にするものから学ぶものもたくさんあるのだと思います。

具体的なテクニックとして、情報量はたくさん載せた方が良いこと、短い言葉で伝わるキャッチコピー(あるいは興味をひく展覧会タイトル)が必要なこと、色使いや文字組のちょっとした工夫で目に入りやすさが変わることなど、専門的なデザイナーでなくても、すぐに始められることがたくさんあるというのもよく分かりました。

また、デザイナーにチラシ制作を委託できた場合に、デザイナーが何を求めていて、どのようなコミュニケーションをとれば良いのか分からないことがありました。展覧会の趣旨説明はできても、「面白い」の根っこの部分を伝えたり、どんなイメージで、世界観で見られたいかを伝えたりしなければならなかったのだなと思いました。

今回のセミナーでは、いままでに思っていたことと真逆のことを言われた箇所がいくつかありました。

美術館にずっといると、狭い世界の常識にとらわれてしまって、一般の来館者の視点を忘れてしまいそうになっていることも自覚することができました。これから他館のチラシを見るときは、単に展示内容だけでなく、どのような考えでチラシを作っているのかも考えながら見たいと思います。
(m.k 様)

タイトルやキャッチコピーの方向性に悩んでいましたが、今回の講義でまず{どのようなメリットがあるのか}の提示などの観点や、加えてお客様を引き付けるフレーズの具体例を知ることができ、今後に活かしていきたいと強く思いました。

また今回の講義を通じて、そもそも企画展に対する姿勢自体、お客様本位のものに方向転換しならければ、と反省させられました。

デザインやマーケティングを意識することは、即ち企画展の構想や中身の精査に直結するということがよく分かりました。これまで、忙しさを言い訳にしてクオリティーの低いポスターを製作してしまったこともありましたが、非常に勿体無い事をしていたと反省させられました。

(h.a 様)

今回の講義では、チラシ作りやデザインの基礎をはじめ、様々なことを学ばせていただきました。デザインというものは何かつかみどころのない難しいものだと漠然と考えておりましたが、作成のポイントをお教えいただけてよかったです。

特に、デザインの重要なポイントとしてあげられていた中で、徹底して「見る人の気持ちにたつ」ということを大切にしていきたいと思います。展示グラフィックを作成する際、見る人にとって魅力的かといった点だけではなく、見た人に時間やお金を費やす価値があると思っていただけるかという踏み込んだところまで想定して作成するようにしていきたいです。

特に今回参加してよかったと思いますのは、実際に自身が作成したチラシを添削し、具体的な改善点までご教示いただけたことでした。

今日は「あの日々をわすれないー太平洋戦争と都城ー」のチラシを添削していただきましたが、実はこれまでに私自身が作成したチラシの中でも一番迷いつつ作成したものでした。企画段階から様々な「天の声」が飛び交いまして、紆余曲折を経て完成したものです。このような事情があったにせよ、チラシを見た人がこの展示を見に行きたいとの気持ちになったか、入場料や時間を費やす価値があると思っていただけたかという視点が欠けていたことに気が付かせていただき、それが私にとって大きな収穫となりました。さらには、「〇〇を紹介する」という情報提供にとどまらないキャッチコピーの書き方とコミュニケーションを意識したデザイン、空襲後のスケッチの資料写真を例にとったビジュアル効果の使い方などをご教示いただけてありがたく思いました。

今回の研修を通して、わずかながらでも展示グラフィック作成の際に私なりの指針となるものが見えてきたかな、と感じています。本日は誠にありがとうございました。
(a.n 様)

先日は素晴らしい講義をありがとうございました。できていないことだらけで、目から鱗な内容でした。

私の場合、ビジュアルがかっこいいとか、すっきりしてるとかにこだわりすぎていて、来館者が欲しい情報をまったく伝えていなかったのだということに気が付きました。特に、キャッチコピーを付けることは、これから意識的に、すべてのフライヤー表面に付けていきたいです。

あれだけ何度も「だから何?」という言葉を意識させていただいたので(笑)、あれからずっと「だから何?と言われないような説明」について考えています…。まずは、自己満足にならないように、来館者の声に耳を澄ませながら、よい発信をしていきたいと思っています。すでに起案の通っているフライヤーを、作り直すことにしました。デザイン的な限界はあると思うのですが、デザイン以外にもできることをたくさん教えていただいたので、それを盛り込んでみたいと思いました。

評価シートやマトリックスはラミネートしてデスクに貼ります。包み隠さずあらゆるノウハウを教えてくださった熊谷先生に感謝しています。ありがとうございました。

(青井美保 様)

どういう人を来館者としてターゲットを絞って来てもらうのかというのを考えた上で、売り込みをどうするのか世界観をチラシで表現して呼び込むというのが、改めて大切であると感じた。

チラシを作るテクニックというよりは、展示や館の企画を練ることから広報づくりは始まっていて、チラシ単独だけでものを考えるべきではないと感じた。企画・立案をどこまで詰めれるのかということを意識いして、これからの業務に活かしていきたい。

今回の講義、大変参考になりました。チラシを作るときには、かっこいい写真とか、美術センスが必要である、と思っていました。しかしながら、今回の講義では、チラシは単体でできるものではなく、企画・立案の時点からチラシ作りは始まっているというのを思い知らされました。講義中の先生のコメントを聞きながら、チラシを通して、企画の良し悪しがわかるということで、チラシは展示の顔であり、世界観の集大成でもあると思いました。「内容を見てもらえば良さがわかる」というのがよくありますが、見てもらえなければ意味がないので、結局は来てもらうためのチラシのデザインいかに魅力的にするのかというところが勝負だと思いました。これからの館運営に積極的に取り入れていきます。今回はありがとうございました。

(小水流一樹 様)

点数化というのがなかなか難しく、どうしても真ん中の50点前後になりがちでした。特に「メリット」について意味はわかるものの、具体的に何がメリットなのかを判断する際に、そうした「メリット」があまり明確化されていないチラシから見つけ出すのが難しかったです。

大学で学芸員養成課程を担当しています。実は2回目の参加です。学生に指導する上でなかなか四苦八苦しておりますが、具体的に活かせる内容が多くて助かっております。

(山内利秋 様)

チラシを作成する際にはコピーを掲載することが重要であること、というのが印象に残りました。

これまで見てくださる方の目線でチラシの作成を行ったり、同僚のチラシにコメントをしていましたが、その根拠となる知識がありませんでした。今回の講座で知識を頂き、これをベースに自信をもって経験を積むことができます。感謝しています。

今後は、2次元のペーパーに製作者の伏線という見えない線が入って、立体的な構成になるようなチラシの作成に向けて努力してみます。そうした目でプロの作成したチラシも見ていたいと思います。

見方、考え方をご教授頂きました今回のセミナー及び、熊谷様に感謝いたします。ありがとうございました。

(中山貴義 様)

主催者様の声

6グループのチラシ添削講評会では、受講生の発表にそれまでの熊谷先生の講義、そしてマトリックスによる自己分析を踏まえた学習成果がよく出ていました。

熊谷先生の熱心なお話が十分に受講生に染み込んでいたなあと、聞いていて感激しました。

(九州産業大学 緒方泉 教授)

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