マーケティングにはプッシュ型とプル型との2種類があります。
プッシュ型:受け手の意思に関係なくこちらから情報を強制的に送る。 飛び込み営業やテレアポなどもこれですね。
プル型:情報を用意しておき、受け手の意思で向こうから情報を取りにきてもらう。
小さな会社にとってのプッシュ型のツールがチラシ、プル型がホームページというところだと思います。
身近で手軽に作れるから、チラシもお手軽に作ってしまう。ワードやパワーポイントで文字やイラストを並べて、色をつけて、書体を変えて、プリンターで印刷し、それを使っています。
ホームページはHTML言語を勉強する人もいるし、そんなの知らなくても無料のサービスでブログを作るようにテンプレートを選択してあっという間に完成します。
しかし、たいへん申し訳ありませんが、出来がひどい。こんなひどいチラシなら、お客さんに見せないほうがマシ。見られてしまうと、そのひどいイメージがお客さんの脳裏に印象づけられてしまいます。
と、ボロクソに書いてしまいましたが、これはしかたのないことです。デザイナーと同じように作れないほうが普通です。作れなくて良いのです。
そして幸いなことに、競合相手もひどいツールを使っているし、お客さんの方もあんまりチラシのデザインに神経質になる人もいないようです。
だからひどいまんまのチラシやホームページを使い続けるのでしょう。プロに依頼するとお金がかかるしね。それも数千円でなく数万から数十万円もします。そのお金が自分で作って浮くのであればそっちの方がいくぶん得した気持ちになるのでしょう。
しかし本当にそれで得しているのでしょうか?
それで、売上が上がっていればはじめて得をしたと言えるでしょう。
時代はもうすでに変わっています。変わりつつあるのではなく、すでに変わっちゃっているのです。今まではそれでよかったけれど、今はもうそのやり方ではダメだということがあらゆる業界やシステムで起こっています。政治も法律も外交も、ニュースを見ていて、ため息ついてしまいますよね。
景気にはサイクルがありましたが、今後はサイクルの波の高さが今までとは違うか、もうサイクルを描かないか(つまりこのまま低迷状態が続くか)、いずれにしても「景気が良くなるまで、耐え忍ぼう」と思っている会社は潰れます。耐えるだけではなく新しい行動を起こす必要があるのです。
そもそも大企業はなぜお金をかけてプロのデザイナーに仕事を依頼するのでしょうか。それは、価値を認めているから。自社の事業を伸ばすためには必要だからと認識しているので、予算を大きく割いています。自社でデザイン部門を持っている会社もたくさんあります。これは昔の時代からそうです。江戸時代からそうなのです。
大手企業はお金があるからデザインをプロに依頼しているのではありません。
規模が大きい会社でも、デザインに価値を置かない会社のホームページはひどいものです。
小さい会社はお金がなくてプロに依頼したくても依頼できない。これは事実です。だから自分で作るのだけれど、なんかうまくいかない。何とかしたい。こういった方が先日の僕のセミナーに来ていただいたのだと思います。
この方たちは「まあ、自分で作るんだから、しょうがない」とか「みんなもダサいから、うちもこんなもんでいいや」とか「素人にしてはなかなか上手にできた」とか、そのようなことを思っていない方たちです。意識の高い経営者はよりよいものを求めて勉強を重ねています。
自分で作るにしても、もうちょっと何とかしたい、売上に結びつけるにはどうしたら良いだろうという意識。自分の事業に関しては専門家ですが、販売の専門家ではない方が多いです。
しかしどんなに事業が素晴らしくくてもお金にならなければそれは経営ではありません。販売の話になるとド素人なのはかまわないのですが、それを苦手だから、わからないからといってほうっておくのは経営者ではない。
僕は自治体から呼ばれて経営者に向けたデザインとマーケティングのセミナーをさせていただいていますが、必ず「デザインはおもてなしです」というお話をさせて頂きます。
こんな営業マンがいたら、皆さんはどう思われますか?
汚い身なり、だらしない服装で、イヤな喋り方、乱暴な言葉づかい、または専門用語の羅列、何が言いたいのかよくわからなくて、頭悪そうな人。
このような営業マンを雇っている経営者はほうっておきません。厳しく教育しますよね。まあ、そもそも面接で採用しませんが。
こんなお店はどうでしょう。どこに何が売っているのかよくわからない、商品は並んでいるけれどその魅力が伝わってこない。照明が暗い。店員が上記のような人物で ゴミが落ちていて、ダンボールや荷物が雑然と置かれている。
こんなお店には入りたくないですよね。
お客様と接する販売という重要な場面でこのような態度や状況だったらお客さんはどう感じるでしょうか?
「もてなされていない」=「軽く見られている」=「大切にされていない」
そんなお店や会社からは何も買ってくれないどころか、何も聞いてくれないし、関心を寄せてくれません。
やや大げさな例をあげたように思われるでしょうが、このような営業マンやお店のような チラシやホームページはたくさんあるのです。
デザインはお客様のためにあるものです。経営者がお客様の事を大切に思っているのであれば、お客さんがお金を払おうかどうしようか悩むというその重要な場面にデザインを導入し、活用しお客様をもてなすことが必要です。
いままでの時代は営業マンが頑張れば、または社長の人脈で、なんとか売れたのかもしれません。しかしすでに時代は変わっていて、それでは売れないのです。
競合会社がデザインの重要性に気がついて、販促ツールを一新してしまったら、どうなるでしょう。
デザインの重要性は今発見されたのではありません。デザインにお金をかけなくても自然と売れていた時代だったので特に必要なかった、という言い方もできるでしょう。しかしそれは中小企業の世界の話で、大企業間では重要な経営戦略のひとつで在り続けています。特に最近その傾向は強まっています。
「うちは会社の規模が小さいからデザインは関係ない」という経営者の方(特におじさん)頭が硬いです。「うちの店は小さいからゴミが落っこちていてもいいよ、営業マンがアホでもいいよ」とは言わないでしょう。セルフイメージを高く持って頂きたいと思います。どうもこのセルフイメージが低いばかりに、デザインの価値を感じない人が多いように思います。
だから、小さい会社の経営者の皆様、銀行から借金してデザイナーに仕事を依頼しましょう!
などと言うつもりはありません(笑)。そうして欲しいのはやまやまですが、そうも行かないのは、たくさんの小さな会社の経営者さんとお話をしてきてわかっていますから。
何とかしたいという方たちのために、ノイエデザインのホームページでは「販促デザイン講座」というページを設けています。
デザイナーでない人でも、コツを知ればデザインは良くなるのです。プロのやっていること、考えていること、テクニックをすべて公開していくつもりです。