現在のように世界的な疫病が流行ったり戦争が勃発したり大地震が起こったり企業を取り巻く環境が大きく、それも急激に変化する時代では経営者はあらゆるところで正しい意思決定をしていかなければ生きて生き残っていけません。
どうすれば意思決定ができるのか、そもそも意思決定とはなんなのか?
ここでは経営学における意思決定についてポイントを解説します。
辞書的に言えば
「目標を達成するために、複数の代替案から、最善の案を合理的に選択する認知的行為」
と言われています。
この言葉を一つずつ分解すると
1 まず経営上で、目標が正しいこと
2 その目標達成のための様々な最善の方策や代替案を揃えること
3 それらを比較し、最善の方策の選択を行うこと
4 選択までの最善の実行計画の立案
5 計画の実施の管理
これらすべてを包括するものです。
有名な理論のひとつにアメリカの経済学者・社会学者であるハーバート・サイモンによる「意思決定論」があります。
サイモンは、
「経営とは意思決定である」
と言っています。
さらに意思決定の対象となる問題を「構造的問題」「半構造的問題」「非構造的問題」の3種類に分けました。
構造的問題とは、解決する方法が明確な問題です。理論的、法則的、構造的なものがはっきりしているので、予測が立てやすい。
非構造的問題とは、解決するロジックが存在しない問題。非理論的、非法則的、非構造的なもので、あやふやで予測不能で、何が起きるかわからない、と言った混沌としたイメージでしょうか。これに関してはいくら考えていても答えは出ません。
サイモンは、「半構造的問題」が重要であると述べています。これは構造的問題と非構造的問題の中間で、解決のための明確なロジックはないけれど、様々な研究者や学者の理論やこれまでのデータの蓄積と言ったいわば左脳的な側面と、経験、勘、創造性から仮説を立てるという右脳的な側面によって適切な解決策が選択できる可能性が高い。というものです。
「勘」が含まれているのも面白いと感じました。勘で意思決定していいのか?と思いますが、サイモンは直感を軽視してはならないと指摘しています。 よく中小企業の経営者でも、直観的な判断をする人がいます。長年の熟練者の勘というのはなかなか馬鹿にできません。感情にかまけたあてずっぽうは論外ですが、勘は学習や経験の産物であり、暗黙知の秘めたパワーと言えるのではないでしょうか。
経営上の問題は「半構造的問題」が山ほどあります。そこで正しい意思決定をするために左脳と右脳を働かせて選択しなければなりません。その選択するのが、なかなか難しい。サイモンは「限定合理性」と「満足化仮説」という節を唱えて、いかに意思決定が難しいのか、そして人は適当に決めてしまうものなのかを説明しています。
「限定合理性」
人間がどんなに合理的な行動を取ろうとしても、さまざまな制約条件によって、あくまで限定された合理性しか持ち得ないという説です。簡単に言えば、最善の選択をしようとしても、時間もない、お金もない、人材もないし、勉強している暇もない。コネもないし、誰に尋ねれば良いのかもわからない。だから、選択肢が限定されてしまう。という様なイメージでしょうか。
中小企業白書の統計を見ていても、「IT化が進んでいない理由」とか「BCPが進まない理由」の上位に上がる理由が、「人がいない、お金がない、暇がない」の3つが常に登場します。
もちろん、経営者はその中で工夫していく必要があるのですが、限度がある。ということをサイモンは説いています。
「満足化仮説」
さらに限定合理性に基づいて、
「経済主体は効用などの目的関数を最大化するのではなく、それについての達成希望水準を設定し、その水準以上の値が達成されれば目的関数の値をさらに改善するための代案を模索することはしない」
という仮説を提唱しています。これを満足化仮説と言います。
上の学者の言葉は全くわかりにくいですが、簡単に言えば、飲み会の幹事が宴会のお店をネットで探していたとして、検索していて、1ページ目に出てきた検索結果を見て、上から5~6番目に表示されたお店の中で、予算に合う良さそうなお店を決めてしまい、2ページ以降はもう見ない。というケースです。検索結果は何十ページもあるし、お店も数百もあるのですが、候補を3~4件に早々に絞ってしまいます。
経営上の意思決定はもう少し時間をかけるでしょうが、最初の数社に問い合わせをして、人当たりの良さそうな会社だとか、営業の巧みなトークでとかで「まあ、ここでいいかな」みたいな決め方をしてしまうことはよくあることですよね。
この様に、経営上の意思決定は簡単ではないのです。
では、どうしたら良いのか?
長くなりましたので、続きはまた後日書きます。