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人に何かを伝えるときに、その人に嫌われてしまっては伝えたいことも聞いてもらえません。逆に好きになってもらえるとスムーズに聞いてもらえます。それと同じに企業のメッセージをきちんと伝えるにはお客様に好きになってもらう必要があるのです。「好きでも嫌いでもない」、そのような場合でも話は伝わりません。普通ではダメなのです。そのためには感情に訴えるコミュニケーションが必要です。いかに自社の製品を「これはすばらしいんです!」などと連呼しても聞く耳を持ってもらえません。本当に良いものか悪いものか、おいしいのか、まずいのかは使ってみなければ、食べてみなければわかりません。消費者はお金を出す前に判断しなければならないのです。ですからいかに「良さそう」と思ってもらえるのかを考えなければなりません。
たとえば企業が新規で人を採用するときに、面接を行います。履歴書を見れば、その人の学歴や職歴、業績や考え方、趣味などが理解できます。この部分はインフォメーションです。書類審査で振り分けて実績のある人と面接を行います。面接では何を見ているのでしょうか。実際に会ってわかるのはその人の身だしなみであったり、服のセンス、化粧や髪型、顔色など目に見えるビジュアルな部分です。さらに声の調子や話し方、目の輝き、言葉使い、その人が持っている雰囲気や品格、明朗さなど、感情で感じる部分です。この人と一緒に仕事をやっていきたいか、信頼できそうか、うちの社員として良さそうかどうか。能力的に同じであれば、最後はその人物の「印象」で採用かどうかが決まります。
同じ事が企業にも言えるのです。企業の商品やサービスはお客様によって常に面接されているといっても良いでしょう。「この商品は何をしてくれるのか、パンフレットにスペックや特徴が書いてあるけれど他社の製品とどこが違うのかな?何となくパッケージが安っぽいな、会社が古くさい感じでちょっと怪しいそうだな、説明もなんかわかりにくいし、読みづらい。色が派手。」など「悪そう」と瞬時に判断されて購買や契約は見送られてしまうのです。

優れたグラフィックデザインとはなんでしょうか。それは優れた「コミュニケーション」ができているデザインです。一方的な「インフォメーション」のような告知では誰も振り向いてくれません。コミュニケーションとしてしっかり伝わるグラフィックデザインが必要です。
では優れたコミュニケーションができているデザインとは何か。それは次の4つの条件がクリアできているデザインのことだと考えています。
わかりやすい文章、見やすい構成で商品・サービスの特徴、特性、価格などを紹介するのは当然ですが、ポイントは「企業側が伝えたいこと」ではなくて「お客様が知りたいこと」をどう表現するかということです。情報の強弱関係・順序・写真や図やイラストの見やすさなど、わかりやすいコンテンツを生むためにはデザインの技術と、「情報の編集力」が必要です。
その商品やサービスをターゲットとなるお客様にどのように見ていただきたいのか、この会社をどのように思ってもらいたいのか。「先進的」なのか「親しみやすい」なのか「クール」なのか「伝統的」なのか。商品やサービスが持つイメージの世界観を正確に伝えられるか。これにはデザイナーの企業や商品への深い理解と表現力が要求されます。
たくさんの競合の中で、他社との差別化は非常に重要です。できあがった表現が同業他社と似たり寄ったりでは意味がありません。商品名やロゴマークを差し替えたら別の会社のカタログに化けてしまうようなデザインでは企業や商品のアピールになり得ません。商品やサービスのアイデンティティをはっきりさせ、オリジナリティのあるデザインが他社との差別化には必要です。
美しいと思うかどうかは人それぞれです。しかし最大公約数的に多くの人がきれいだとかちょっとアンバランスだと感じる造形も確かに存在します。訓練を重ねたデザイナーはこの感覚が鋭く、常にあるレベル以上のものをつくることができます。人は美しいものに惹かれる本能を持っています。美しいものに対しては心を開き心を動かされます。この原理を利用するのがデザインという技術です。
