展示デザイン

ミュージアムアイデンティティとプロモーション

ミュージアムの広報活動としては、2つの方向があります。ひとつは、企画展など、現在の活動の広報・宣伝活動、もうひとつは、ミュージアムそのものの存在をアピールする広報、すなわちミュージアムアイデンティティです。他のミュージアムとの差別化を図り、その地域において、人々の意識の中に良いイメージ付けをするためにじっくりと存在感をアピールし、浸透させていきます。ミュージアムのイメージを高めるためには、格好良いシンボルマークを作るということではなく、ミュージアムが発信する、あらゆるビジュアルに関して、ミュージアムショップへ一定のクオリティのレベルと、ビジュアルの方向性が統一されていなければなりません。それは、ミュージアムに足を踏み入れる前から始まっています。ポスターやチラシを見て、期待感と興味をいだき、ミュージアムに赴きます。エントランスの看板や、サインデザインに、期待感を高め、チケットを買い、パンフレットをもらって、展示室へ入ります。展示デザインの中を巡り、満足一杯で展示室を後にします。図録を買い、友の会の会報をもらい、館内サインの案内に従い、ミュージアムショップへ。オリジナルグッズを買い求め、シンボルマークの入ったバックに入れてもらい、家に帰ります。さらに、ホームページにアクセスし、今日見てきた展示に関して、理解や研究を深めます。そして、次の企画展のお知らせのダイレクトメールが届きます。ビジュアルに訴えかける媒体は、こんなにもあるのです。どれひとつをとっても、手を抜くべきではありません。広報とは、インフォメーションではなくて、コミュニケーションなのです。相手に訴えかけ、行動を起こさせるパワーのあるデザイン。出かけてみようかな、見に行きたいなと思わせる物でなければなりません。ポスター、チラシ、チケットのデザインは、展示のテーマや内容とちぐはぐな印象になっていないか、企画展のエントランスのディスプレイデザイン、サインデザインは入場する人々に、期待感、ワクワク感を与えているかなど、グラフィックデザインに関わる重要な部分が、疎かになってはいないでしょうか。最近では、横浜美術館などは、一流のグラフィックデザイナーを登用して、集客しているし、民間の美術館なども、力を入れています。博物館も、オープニングのポスターや、シンボルマークをトップクラスのグラフィックデザイナーに依頼してつくるところが最近出てきましたが、まだまだ、そのような意識を持つ自治体は多くありません。一流の先生に依頼することが大切なのではなく、広報におけるグラフィックデザインの重要さに気がつく意識が大切だと思います。

マルチメディアに関して

たいてい、検索装置のようなメディアは、映像会社や、マルチメディア専門会社に依頼してしまうことが一般的です。コンピュータテクノロジーの高い専門性が必要とされるからでしょう。しかし、インターフェイスのデザインは、おそらくグラフィックの専門家が手がけていないのではないかという物が多く見受けられます。単に、デザインが、良い、悪いということよりも、ミュージアムの展示デザインと同じイメージになっていなかったり、同じ内容を説明するのに、パネルの図と、検索装置の図のデザインが違っていたり、統一感がなく、バラバラであるところが問題です。プログラムや、ハードウエアに関しては、映像会社の担当でお願いしたい部分ですが、インターフェースのデザインは、展示グラフィックと同じデザイナー、もしくは、ディレクターに依頼すべきであると考えます。もちろん、その場合、マルチメディアの基礎を理解しているデザイナーでないと、うまくことが運ばないでしょう。テクノロジーの進歩により、将来は、薄型の大型モニターが開発され、今のような解説パネルは皆、モニターの形に変わってしまう可能性もあります。または小さな端末を持って、操作しながら展示物を見て歩くのかもしれません。文字や静止画のみならず、映像、音声も加わり、さらにインタラクティブな要素も加わるでしょうから、これからのグラフィックデザイナーは、映像のセンス、音のセンスなど時間のデザイン感覚や認知科学をはじめとする情報デザインの知識も要求されるでしょう。 現在、全国的に、インタラクティブな装置や、映像を使った展示装置が当然のように設置されていますが、ともすると、情報の一方通行になりがちなメディアであり、情報を得ることが、物を知ることだと錯覚を起こさせやすい点が課題でしょう。「知る」ということは、本物、本当のことをリアルに「感じ」、「自分のものにする」ことだと思います。リアルに感じるのは、写真を見るよりも、実際の「物」(この場合、レプリカでも良い。)による体験によるところが多いと思います。たとえば、恐竜の大きな骨を見上げて、大きさ、形などを実感したり、坂本龍馬の手紙の筆跡をたどり、彼の人柄、息づかいを感じることです。「物」により、「感じる」には、5感を働かせることです。だから、展示空間に身を置いて、展示物や、展示パネルと対面 することが重要なのであり、「物」があってのミュージアムなのです。「物」なくして成り立つのであれば、ミュージアムはいらないのであり、本やビデオで良いのです。コンピュータによる展示装置が音や映像を一方通行に流す掲示板になってはなりません。「物」とからめて、どうすれば、リアルな体験、感動が与えられるのか、新しいシステムやコンセプトを研究をしていかなければならないと思っています。

お問い合わせ

クマデ総研

コラム『経営を伸ばす 視覚伝達デザインの鉄則』

このページのトップへ