展示デザイン

ミュージアムには何度も行きたくなるような仕組みや、コンセプトが必要

以前、私はミュージアムの解説パネルのデザインについて、様々な情報を、どうすればわかりやすく、美しく見せられるか、という展示技術的、デザインテクニック的な部分での、むづかしさや、おもしろさに魅力を感じていました。その後、ミュージアムマネジメント学会や、日本展示学会などのシンポジウムや、出会った方々のお話を伺うようになり、展示デザインという狭い分野ではなく、ミュージアムに関して、様々なことを考えさせられるようになりました。ミュージアムの役割、存在意義を考えてゆくと、社会の人々や子ども達のため、地域社会のためによりよく機能させるには、グラフィックデザインの改善、向上だけでは、どうにもならない問題がたくさん見えてきたのです。ミュージアムは総合的なひとつの作品であり、様々な分野の専門家がクロスオーバーし、議論を重ね、プランを作っていくべきものだと考えます。もちろんそうなれば、各専門分野のスタッフは、自分の専門知識のミクロ的な視点の他に、社会や、人間を理解し、マクロ的な面 で、ミュージアムを作っていくための知識や考えを持っていなければならないでしょう。「物」や「体験」を通して、「伝える」ためには、プランニングの段階からも、空間デザイナーやグラフィックデザイナーを交えて、総合的な視点でコンセプトと、展示技術を開発して行くべきだと思います。視覚伝達の専門家であるグラフィックデザイナーはアートディレクションはもちろん、CI理論、認知科学、情報デザインなどのスキルを持って、「伝える」技術を、有機的にプランの中で生かしていかなければなりません。現状は、ピラミッド型のトップダウンの形であり、ベルトコンベア式に制作が進行している形ですが、これからは、円錐型のシステムへの変革が待たれます。このような形になれば、画一化され、没個性化されているミュージアムのデザインにも、変化が見られるのではないでしょうか。

コラボレーションで作るミュージアム

常々、なぜ、ミュージアムへ足を運ぶ人が少ないのだろうと思っていました。おそらく、よほど関心がない限り一度見た物は「もう見たから、もう一度同じ物を見る必要はない」というところでしょうか。しかし、私たちは、ディスニーランドや、好きな映画や、お気に入りの店には、何度も繰り返し足を運びます。そこには、感動があり、居心地がよく、行くと楽しいからです。今のミュージアムには、これらがかけているのではないでしょうか。その地域の近隣の人々が、何度も行きたくなるような仕組みや、コンセプトが必要です。ミュージアムが何度も行きたい場所ではないといわれるのは、人々の知的関心がどこにあるのか、どうすれば関心を持ってもらえるのかを考える努力が足りないのも原因のひとつでしょう。良い企画だから、貴重な発掘物だから、珍しい物だから、人が来るだろう。という、発信者の思いこみや、知りたい人だけ来ればよい、みたいな姿勢では、ますます人は足を遠のかせる一方です。もちろん、大衆に迎合するようなことでは、ミュージアムの存在意義が違ってくるのですが、人に喜んでもらえるような博物館、行きたくなるようなミュージアムにして行くには、人が何を思っているのかを時代の移り変わりと共に考えていかなければなりません。それには、マーケティングが必要であり、オリジナリティが大切なのではないでしょうか。さらに、その評価をきちんとして、よりよい企画の参考にしていくべきです。アメリカでは、マーケティングと、評価の専門家が、ミュージアムの職員として、確立されているといいます。

リピーターが多いミュージアムとは、その地域の人々が集えるようなコミュニティの性格を持たせていく存在とであることが大切だと考えます。それには、その地域の人々とのリレーションシップを深めるようなシステムや提案が必要です。その地方に住む学芸員が中心になり、地域におけるマーケティングを行い、その地域ならではの、個性的なミュージアムをつくって行くべきです。しかし、現状は、学芸員が大手のディスプレイ会社にまかせっきりで、その地域から遠く離れたスタッフが設計、デザインするために、没個性化、デザインの画一化が起こっています。これは、デザインをどう差別化しようか、という表面的なことではなく、地域とのリレーションシップという概念を取り入れ、ミュージアムづくりの意識を高め、システムを変えていかなければならない問題だと考えます。

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コラム『経営を伸ばす 視覚伝達デザインの鉄則』

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