今まで博物館の展示グラフィックの仕事をしてきて、いつも感じることは、あまりにも展示グラフィックは、おざなりにされているということです。一つの博物館ができあがる工程の中で、プランナーがコンセプト、プランを立て、設計デザイナーが空間を設計する。解説パネルのグラフィックデザインは一番最後に、空間デザイナーに設定された板面 のスペースに、学芸員の書いた原稿を、うまく収めてくださいといったように、付け足し的な扱いにされている場合が多く感じます。 ミュージアムに来館する人たちは、展示グラフィックの解説パネルや、図解、サイン、イラストなどの視覚伝達媒体から展示物に関する情報を受け取り、学び、感じます。このことを考えると、展示グラフィックが、建築や、インテリアと同じくらいに重要な位 置として扱われているかというと、そうは思えないのが現状です。 日本のグラフィックデザインのレベルは、今や世界でもトップクラスにあるといえましょう。ニューヨークアートディレクターズクラブや、海外のポスタービエンナーレに、毎回日本のグラフィックデザイナーの作品が上位 の賞を獲得しています。しかし、「アートディレクターズクラブ年鑑」「日本グラフィックデザイナーズ年鑑」など、いずれの年鑑も、ディスプレイにおけるグラフィックデザインのページが極端に少ない。展示デザインが掲載される「年鑑日本の空間デザイン」ですら、グラフィックデザインは、空間デザインの添え物的な扱いであり、「展示グラフィック」のような分野は確立されてはいません。 高学歴社会、情報社会の中で、ミュージアムの利用者は知的好奇心も高く、最新の情報を持っています。さらにビジュアルなメディアの発達やクオリティの高いデザインの中で日常を過ごす子供達の感性も過去と比べると飛躍的に高まっていると思われます。このような時代の変化の中で、ミュージアムは未だ、旧態依然とした展示のプランやデザインが多く見受けられます。研究者が「知識を教えてあげる」的な立場で考えており、利用者の側からの視点が足りないと思われます。 「教師」という優位に立つ者が、劣っている「学ぶ人」に対して知識を伝達するという図式は、現在の学校教育の考え方です。ミュージアムは学校教育とは違った発想や切り口を持ち、社会人にとっても知の楽しさを提供できるような施設であるべきなのです。このような学校教育的なプロセスですと、目的があって知りたい人にとっては、効果 があるかもしれませんが、果たして、ミュージアムに足を運んでくれる人はこのようなケースは少ないのではないでしょうか。関心や興味があってミュージアムに来ても大金をかけて作った剥製やレプリカ、模型を見物し、「おもしろかった」と思ってはくれるでしょうが、知の楽しさや、知的感動や新しい発見を味わって、「また来てみよう」と思う人は何人いることでしょうか。これからのミュージアムはもっと「学んでもらう」姿勢で、そのためにはどのようにすればよいのか、考えるべきなのです。「学ぶ」ということは、知識を受け取る行為ではなく、自主的に興味をそそられ、もっと知りたいと思わせなければ成立しないものなのです。そのためにはどのような切り口で情報を提供するのか、そして知りたいことが「わかる」展示の新しい仕組みやシステムを開発しなければなりません。それにはプランの段階から発想の転換が必要になってきます。その情報を利用者に伝達するメディアが、解説パネルや、コンピュータを使った展示システムであり、そこにグラフィックデザインの重要性が注目されてくるべきなのです。 ![]() |